研究課題/領域番号 |
25780423
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金井 嘉宏 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60432689)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不安症 / 社交不安症 / 対人不安 / 認知行動療法 / 情動調整 / 認知的再評価 / 注意 / ワーキングメモリ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,社交不安症に対する認知行動療法の治療効果を高めるために,技法のひとつであるエクスポージャー(曝露法)の有効かつ患者の負担が少ない方法を開発することである。そのための方法として情動調整方略に注目し,その効果発現メカニズムと情動調整方略とエクスポージャーを併用した場合の効果を実験的に調べる。 今年度は,まず,社交不安者情動調整方略のひとつである認知的再評価を行っているときの脳活動を測定したfMRIデータを再解析した。自分のスピーチ映像に対して認知的再評価を行っているときの脳活動を社交不安の高い者と低い者で比較すると,眼窩前頭前野(OFC)で有意差がみられ,社交不安低群はOFCが活性化しているのに対し,社交不安高群は活性化していなかった。また,認知的再評価を行っているときのOFCの活動と機能的に関連する部位を特定するために,Psychophysiological Interactionの分析を行ったところ,前部帯状回と関連していることがわかった。 さらに,情動調整が社交場面における判断の歪みや社交不安の強さに及ぼす影響を調査研究によって明らかにするために,2年間の間隔を設けた縦断調査を行った。その結果,情動調整を構成する「注意のコントロール」や「破局的思考の緩和」といった変数は,社交場面における判断の歪みを媒介して2年後の社交不安の強さを予測することが明らかにされた。 最終年度は,社交不安者のワーキングメモリを測定する際に適した課題を実験で明らかにするとともに,情動調整方略とエクスポージャーを併用した場合の効果を,心拍変動や皮膚電気活動といった生理指標も測定しながら検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情動調整が社交不安に及ぼす影響プロセスを2年間の縦断調査によって明らかにするとともに,fMRIデータの再解析によって情動調整に関わる脳活動のうち,社交不安の高低群で差がみられる部位が特定された。さらに初年度のワーキングメモリに関する実験から,リーディングスパンテストが,社交不安のワーキングメモリを測定する課題としては適していない可能性が示された。これらを踏まえて,最終年度の計画を実行することができる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,社交不安者のワーキングメモリを測定する際に適した課題を実験で明らかにするとともに,情動調整方略とエクスポージャーを併用した場合の効果を,心拍変動や皮膚電気活動といった生理指標,およびワーキングメモリも測定しながら検討し,その効果発現メカニズムを明らかにする。 この研究成果は国際学会で発表するとともに,国際誌に論文を投稿する。さらに,研究代表者のホームページにおいて広く公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表の旅費が少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に英語投稿論文を校正する際の費用として用いる。
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