研究課題/領域番号 |
25780425
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本橋学館大学 |
研究代表者 |
鳥越 淳一 日本橋学館大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90635880)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人格障害 / 心理アセスメント / SWAP-200 / 日本語版作成 |
研究概要 |
本研究は、米国で開発されたThe Shedler-Westen Assessment Procedure-200 (以下、SWAP-200)の日本語版を作成し、日本の精神保健領域における有用性の一部検証を行うことを目的としている。近年、日本では(広くは世界の動向として)統計的手段を用いた実証的研究とナラティブ・アプローチのような「主観」を対象とした研究とをバランスよく実践に取り入れていこうとする動きがある。SWAP-200は臨床家の観察を統計的に分析することによってシステマティックに臨床で利用するためのツールであり、諸外国では上記のような社会的ニーズへの応え方の一つとなってきている。 本研究では、日本語版を作成した後、既存の類似したパーソナリティ検査との相関の確認や描き出される臨床像の収束性や弁別性の確認を行い、日本語版の信頼性・妥当性の検証を行うことを計画している。本年度はその最初の段階である、日本語版の作成に着手した。その手順は、1.研究者が原版SWAP-200の日本語訳を作成し、2.それを日本人翻訳家が再度英訳し、back-translationを作成。3.SWAP-200の作成者の一人であるDr. Jonathan Shedlerと彼の研究チームが原版と日本語版のback-translationの比較検討を行い、4.指摘を受けた両者の相違点を基に、さらに日本語版を修正していくというものである。 現在、上記プロセスが二往復している段階であり、言葉の一致度はもとより、表現に多義語や偏りが含まれていないかなどを確認しながら、どのようなバックグラウンドをもつ臨床家でも利用できるような、非常に細かな訳出を行っている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SWAP-200の作成者たちは、治療過程や治療結果の臨床的/研究的評価が、その臨床家/研究者のバックグラウンド(たとえば、学派や訓練などによって強調される点の違い)に大きく左右されてしまうことを問題視している。そのため、本アセスメントの項目は、そうしたバックグラウンドの影響を最小限に抑え、さまざまな学派・流派の臨床家が等しく使えるよう企図されており、既存の概念を専門用語を使わずに表現することに細心の注意が払われている。 日本語版作成においても同様に、すべての項目に対して、英語と日本語の微妙な語感の差が徹底して検討されており、想定以上の時間が費やされている。また、加えて、本研究者の他に、研究協力者(back-translationを作成している翻訳家と、そのback-translationをチェックするDr. Shedlerやその研究チーム)の時間的都合もあり、当初の予定通りに研究が進んでいないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は現在、当初の計画以上に日本語版作成に時間を費やしているものの、原版の趣旨を、その開発者とともに確認しながら、日本語版にしっかり反映させていることができているため、このまま研究活動を続けていく予定である。時間的問題は、今後、他のパーソナリティ検査との相関や、本アセスメントを用いて描かれる臨床像の妥当性に関して、研究協力者に早い段階から依頼をかけ、少しでも円滑に研究が遂行できるように時間短縮に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、平成25年度内に日本語版が作成され、その妥当性の検討を行う予定であった。妥当性の検討には、精神科医や臨床心理士らの臨床家に協力を仰ぐ必要があり、そのための旅費と協力に対する謝金を多く計上していたが、当初の想定以上に日本語版作成に時間がかかっており、妥当性の検討まで研究を進めることができなかったのが次年度使用額が生じた大きな理由である。 日本語版の作成が完了次第、すぐに妥当性の検討に移る予定であり、当初の予定通り、臨床家の協力に対する謝金として使用する予定である。また、本年度は、学会などで本研究の意義を発表し、日本語版を紹介する予定であり、遠方への旅費としても利用する予定である。
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