研究課題
本研究の目的は、機能的磁気共鳴画像法を用いて、気分障害における認知的情動制御不全に関わる認知神経メカニズムを明らかにし、その病態理解を深め、気分障害患者の情動制御支援につなげることである。気分障害は、自殺のリスクが高い疾患であり、全疾患の中でも、疾病負担の大きな疾患である。これまで、気分障害における自動的な情動処理に関する脳機能画像研究は多くなされてきているが、認知的情動制御に関する研究はまだ少ない現状がある。本研究では、機能的磁気共鳴画像法を用いて、認知的情動制御を行っている時の脳活動を健常者と気分障害で比較し、気分障害の認知的情動制御障害の認知神経メカニズムを明らかにする。平成27年度は、昨年度に引き続き、健常成人参加者を対象に実験を実施しデータ収集を完了した。合計38名の健常成人参加者を対象に情動制御課題を行っている時の脳活動を、機能的磁気共鳴画像法を用いて測定した。なお、実験中は皮膚電位も測定して情動的な覚醒状態を測定し、実験の前後で情動制御に関わる心理的変数の測定や神経心理学的検査も行っている。解析の結果、ネガティブ情動に対する情動制御(ネガティブ情動を低減させる制御)時には、角回や内側前頭前野と背外側前頭前野などの活動が高くなった。これらの活動は認知的制御を反映していると考えられる。一方、ポジティブ情動に対する情動制御(ポジティブ情動を高める制御)時には、補足運動野や線条体などの活動が高くなった。線条体など脳内報酬系にも作用する形でポジティブ感情を高めている可能性がある。今後、情動制御にかかわる脳部位との機能的結合性の検討や情動制御にかかわる心理的変数や神経心理学的検査との関連性についても解析を行った上で、学会への投稿を予定している。気分障害患者のデータ収集は、まだ完了していないため、データ収集が完了次第、研究発表を予定している。
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