研究課題
本年度には抑うつ、反すう、社会的問題解決の因果関係と、反すうと衝動性の関連について検討を行った。大学生285名が4週間の間隔を空けて3回、抑うつ傾向を測定するBeck Depression Inventory-Second Edition(BDI-II)、反すうの頻度を測定するRuminative Responses Scale(RRS)、社会的問題解決の5次元を測定するSocial Problem Solving-Revised Short Version(SPSI-R:S)、衝動性の5次元を測定するUPPS-P Impulsive Behavior Scale (UPPS-P)に回答した。BDI-II、RRS、SPSI:Sを用いた分析の結果、反すうとネガティブな問題志向は相互に増強し合う関係にあることが示された。また、反すうと衝動的・不注意型スタイルが4週間後の抑うつを強めることが示された。この2つの要因には有意な関連が認められなかったため、独立した経路で抑うつを強めていることが示唆された。一方、RRSとUPPS-Pを用いた分析の結果、抑うつの影響を統制した上でも、反すうはネガティブな緊急性(ネガティブな感情が生じた際の衝動的反応)とポジティブな緊急性(ポジティブな感情が生じた際の衝動的反応)という、衝動性の2次元と関連が認められた。衝動的・不注意型スタイルも衝動性の一側面であると考えると、反すうと衝動性がどの程度独立しているのか、抑うつを導くメカニズムに異同があるのかについて、更なる検討を行う必要があると考えられた。3年間の研究の結果、反すうが回避的な問題解決と相互作用をして抑うつを強めていることが示唆された。そのため、大学生の抑うつの予防・改善をするためには、この2要因の相互作用を視野に入れ、介入を行うことが有効であると考えられる。また、主として反すうと社会的問題解決の関連を検討した3年間の研究の副産物として、反すうと衝動性の異同に関する新たな知見が得られた。抑うつや反すうの研究を発展させるために、「衝動性」という概念を導入する必要性が示唆された。
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