研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、援助ニーズを抱える学生に対して学内の相談機関の有効利用を促すエビデンスに基づいた介入プログラムを開発し、評価を行うことであった。最終年度の平成27年度は、「学生相談機関の有効利用を促す介入プログラムの開発と評価―プログラムの提供方法の違い」(研究3)と「学生相談機関の要因が学生相談機関利用の選好に及ぼす影響」(研究4)および研究成果発表を行った。 研究3では、研究2で開発した介入プログラムについて、提供方法の違い(冊子と動画)による効果検討を行った。大学生30名を対象にプログラムを実施した結果,冊子条件ではプロセスのステージが促進された学生は20名中3名,変化なしが13名,後退が4名,動画条件では促進が10名中3名,変化なしが5名,後退が2名であった。援助要請の変数を従属変数,介入条件と時期を独立変数とした2要因分散分析を実施した結果,有意な主効果・交互作用は認められなかった。 研究4では、プログラム改良に向け、学生相談機関の要因が学生相談利用の選好に及ぼす影響を明らかにするために、大学生400名を対象に質問紙調査を実施した。コンジョイント分析を用いて検討した結果、学生相談機関利用意図においては「相談申込方法」の重要度が最も大きく、「事前申込なし」が最も好まれる一方、「電話」「直接来室」による申込方法は好まれなかった。 本研究課題について、University of Canberra, AustraliaでHelp seeking related research in Japanとして援助要請に関する研究者とともに成果発表を行った。 本研究課題で開発した援助要請行動のプロセスに着目した介入プログラムは、学生相談機関の有効利用を促すうえで一定の効果が認められたが、学生のプロセス段階によっては効果は限定的であった。今後さらなるプログラムの改良が必要である。
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