研究課題/領域番号 |
25780435
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
瀧川 真也 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (10587281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 懐かしさ / レミニッセンス・バンプ / 自伝的記憶 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,懐かしさ感情を用いた回想法の開発のための基礎的研究として,懐かしさ感情の特性と機能,さらに精神的健康との関連を明らかにすることである。 平成27年度は,懐かしさ感情の特性を理解するのために,懐かしさと密接に関連している自伝的記憶の観点から,懐かしさ感情の喚起要因について検討を行った。調査は20~69歳までの700名(平均年齢=44.9歳)を対象に実施された。対象者は懐かしさを感じる音楽(曲名と歌手・演奏者名)を記述し,その音楽を最も聴いていた時期,音楽を最後に聴いた時期,音楽の聴取頻度,音楽に付随する記憶などについて回答した。調査はWebを介して実施された。 調査の結果,参加者は10代後半から~20代にかけてよく聴いていた音楽により懐かしさを感じていることが明らかとなった。また,懐かしさ感じる音楽を聴いていた時期の分布については年代による差は認められなかった。このような特徴は,自伝的記憶を想起する際の分布の特徴であるレミニセンス・バンプと合致するものであり,懐かしい音楽においても同様の分布が認められた。自伝的記憶の分布の特徴の1つである新近性効果は本調査の結果では確認されなかった。このことから,懐かしさの喚起には,レミニセンス・バンプの生起要因として考えられている認知的要因や社会発達的要因が影響していることが示唆された。平成27年度の調査で得られた結果の一部については,平成28年度に開催される第31回国際心理学会儀(ICP2016)で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は懐かしい記憶と精神的健康との関連について調査を行う予定であったが,年度内に調査を実施することができなかった。理由は,平成26年度に実施予定であった懐かしさ感情の喚起要因に関する調査に関して,調査手続きに問題があり,当初の研究計画を見直す必要が生じたことによるものである。その結果,研究計画全体の進行が遅れることとなった。なお,平成26年度実施予定であった調査は,手続きを修正した上で,平成27年度に実施し,データの分析も終えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究目的は,高齢者を対象に懐かしい記憶の想起と精神的健康との関連について検討を行うことである。具体的には懐かしい記憶を想起することにはどのような機能があるのか,さらに懐かしい記憶を想起することは精神的健康に影響を及ぼすのかを調べる。そして,上記の調査結果を含めたこれまでの研究成果をもとに,懐かしさ感情をツールとして用いた回想法の可能性について検討する。また本研究で得られた成果は,学会等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は旅費およびWeb調査の調査委託費として直接経費を使用した。ただし,平成26年度実施予定であった調査の実施が遅れ,結果として平成27年度実施予定の調査を当該年度に行うことができなかった。これに伴い平成27年度実施を予定していた調査は平成28年度に行うこととなり,調査費用も次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,高齢者を対象に懐かしい記憶の想起と精神的健康との関連を調査する。調査はWeb調査を用いることを計画しており,その調査委託費として経費を使用する予定である。
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