第二次世界大戦時に住民を巻き込む地上戦が展開された沖縄には,当時の体験の記憶に苛まれている人びとが多い。先行研究で,「自分の体験や想いを見える形で後世に残したい」というニーズがあることが明らかになり,本研究では,体験者の自発的な語りに沿った映像や写真を用いて,自分史を整理する方法の開発に取り組んだ。3年間の研究期間で,20名と延べ1,112回実践を重ねた結果,単なる自己語りよりも視覚媒体を併用する方が,高齢の語り手にとって満足できる時間となることが示唆された。この方法は,高齢者心理臨床の現場での活用が期待できるため,今後さらに検討を続ける。
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