研究課題/領域番号 |
25780440
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
中里 和弘 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90644568)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 死別 / 遺族 / 在宅 / 在宅療養支援機関 / グリーフケア / 訪問看護事業所 / 在宅療養支援診療所 |
研究実績の概要 |
本年度は、在宅看取りに対応している関東1都6県の訪問看護事業所1650ヶ所を対象に質問紙調査(郵送法)を実施し、遺族支援の現状把握、提供者の支援に対する認識を整理した。515事業所から回答を得た。 その結果、支援の実施率では、遺族訪問が8割、相談の対応が6割、手紙やカード送付、葬儀参列、他機関の紹介は1~2割、それ以外は1割未満であった。支援意義の内容(n=295)を整理したところ、遺族の意義は「介護や看取りに対する後悔の軽減」「悲嘆の表出と整理」「必要なサービスの紹介」、事業所の意義は「提供したケア評価」「スタッフのグリーフケア」が挙げられた。支援の有用性に関連する要素(n=322)は「支援を行う際の体制(支援時期や対応スタッフの適切性)」「態度(家族の介護経験の理解した言葉がけ、支援の必要性の見極め、個別性の配慮)」「終末期ケアの家族の参与感と対応(本人と家族の意思の尊重、看取り期の説明、エンゼルケア)」が挙げられた。 訪問看護事業所では、日常業務の延長線で対応可能な支援は取り組みやすい一方、付加的な時間や場所を要する支援の実施は難しい現状にあった。ただし家族の関わりが大きい在宅看取りでは、介護や看取りの選択や行為に対する遺族の後悔や自責の軽減に対して、介護中のエピソードや思いを共有できる看護師の存在は重要な役割を果たすと考えられた。また心身の健康状態の悪化、生活基盤の変化、社会的孤立に繋がる可能性の高い高齢者遺族にとって、事業所が遺族訪問を行い、遺族の状態を把握し適切なサービスに繋がる意義は大きい。今後は事業所単位でできる遺族支援の質を高めると同時に、他機関と連携し地域として遺族を支える支援のあり方を検討することが重要といえる。また遺族の適応に終末期ケアの家族の参与感と対応との関連が提供者側で意識され、死別前の要素が遺族の適応に及ぼす影響を検討することが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、関東1都6県の在宅看取りに対応している訪問看護事業所を対象に質問紙調査を実施し、遺族支援の現状把握、提供者の支援に対する認識を具体的に整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施した質問紙調査で返信のあった訪問看護事業所のうち、追加調査協力の得られた事業所を対象に質問紙調査を実施する。遺族訪問の質の評価及び事例をベースに死別前の訪問看護時のケア情報を得ることで両者の関連を検討する。 また来年度は、在宅看取りを積極的に取り組んでいる在宅療養支援診療所を対象に質問紙調査を行う。本年度、訪問看護事業所を対象に実施した調査に依拠した内容を採用することで、訪問看護事業所と診療所の遺族支援の質や認識の相違を明らかにし、地域連携のあり方について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、質問紙調査で返信のあった訪問看護事業所のうち、追加調査協力の得られた事業所を対象に面接調査を実施する予定であった。ただし面接調査で検討予定であった遺族支援の現状に関して、質問紙調査で十分に把握することができた。また質問紙調査の結果を整理する過程において、実施率が極めて高い遺族訪問の質の評価及び死別前の訪問看護のケアとの関連を検討する必要性が明らかにされた。 そこで追加調査を面接調査から質問紙調査に変更し、事例をベースに遺族訪問の質の評価、死別前の訪問看護のケアと遺族訪問時の対応の関連性を検討することが有益性が高いと考えられた。以上の理由から、当初予定していた面接調査費用を次年度に実施する訪問看護事業所を対象とした追加の質問紙調査費用に使用することから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
在宅看取りに対応している訪問看護事業所を対象に追加実施する質問紙調査費用(印刷代・発送費・データ入力・報告費用)で使用する。
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