研究課題/領域番号 |
25780441
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中島 亮一 東北大学, 電気通信研究所, 産学官連携研究員 (30626073)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視覚的注意 / 視覚探索 / 視覚的認知 / 頭部運動 / 眼球運動 |
研究概要 |
我々は普段、周辺の様々な領域へ視線を向けることで、その領域の視覚情報を処理している。その際、我々は目だけではなく頭や体も対象の方へ向けることが以前から知られていた。つまり、我々は、横目観察の状態ではなく、頭を向けてある程度の正面観察の状態で、対象を捉えることを好む。この原因に関しては、主に、頭部と眼球の運動制御の問題として検討されてきたが、それとは別に視覚的認知の観点からも検討する必要があると考えた。本研究課題では、頭部方向が視覚的認知に与える影響について、主に視覚的注意に焦点を当てて検討を行うことを目的とした。 本年度は、視覚探索課題を用いて、頭部(今回の実験では、頭部と身体の方向は一致している)が探索刺激に向いた場合(正面観察条件)、頭部がそれとは異なる方向に向いた場合(横目観察)における成績を比較した。その結果、視覚的注意が必要だと言われている逐次探索において、横目観察では正面観察と比較して、成績が低下した。一方、視覚的注意があまり必要ないと言われている並列探索においては、そのような顕著な成績低下は見られなかった。さらに、この成績低下は、横目観察において眼球運動の効率が低下したこと、横目観察において両眼に入力される視覚情報が異なることのような、低次の視機能の低下が主たる原因ではないことも確認した。したがって、横目観察は、視覚的注意が関与する視覚的な情報処理に対して妨害効果をもたらすことが示唆された。これは、これまでの視覚研究において見過ごされてきた頭部方向という要因が、視覚的な情報処理に確かに影響を与えることを示した成果だと言える。この研究結果は、国際誌(PLoS ONE)で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、頭部方向が視覚的認知(視覚的注意)に与える影響について検討を行っているが、本年度は、その最も基本的な部分(頭部方向と眼球方向が大きくずれていると、視覚的な情報処理が妨害される)を明らかにできた。また、その成果が論文として国際誌に掲載されたので、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をふまえ、今後は頭部方向が、どのように視覚的注意に影響を与えているかについて、更なる検討を行う。頭部と眼球方向が大きくずれた場合に、視覚的注意が関与する視覚情報処理に妨害効果があるという結果は、眼球方向だけではなく、頭部方向にも注意資源の一部が向きやすいことを示唆する。もしそれが正しいとするならば、それがなぜかについても明らかにしていく。それと同時に、頭部が身体に対して横を向いた場合(例えば、体が正面で頭部が右を向いた場合)における、視覚的注意についても検討を行う予定である。これらの検討を通じて、頭部方向と視覚的注意の関係について明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、国際学会に情報収集のために参加しようと考えていたのだが、初年度は研究を進めることを優先させるために、学会には参加をせず、その分を次年度の成果発表のための学会参加に当てようと考えた。 新たに実験装置(横方向に回転させることができるアゴ台)が必要となったため、それを購入する。情報収集、成果発表を行うために、国内学会、国際学会へと参加することで、旅費として使用する。人を対象とした実験を行うため、実験参加のための謝金として使用する。研究成果を論文としてまとめるための、研究協力者との打合せのための旅費として使用する。また、論文を投稿するための英文校閲費、掲載が決定した場合の掲載費として使用する。
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