研究課題/領域番号 |
25780443
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
末永 叔子 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (80431667)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 注意欠陥多動障害 / 認知機能 |
研究概要 |
本研究では注意欠陥多動障害(ADHD)モデルマウスの認知機能の特徴や脳神経の形態的特徴を明らかにすることを目的としている。ADHDは注意障害、多動性、衝動性を中核症状とし、近年その存在が社会的に認知されるようになってきた。ADHD者には中枢神経系のドパミン神経系の機能異常の存在が示唆されている。脳内ドパミン系は注意機能をはじめとした様々な認知機能と関わっていると考えられているが、ADHDと診断されたヒトの認知機能の特徴やADHDの発症メカニズムは未だ不明な点が多い。 我々は主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子が欠損しているマウスの移所行動を観察し、行動量の増加が見られること、また脳内ドパミン系機能に異常があることを確認し、このマウスがADHDモデルマウスとして使用できる可能性を見いだした。そこで、当該年度は上記遺伝子改変マウスの認知機能の特徴を明らかにすることを目的とした。 空間学習とその逆転学習課題では、遺伝子改変マウスと野生型マウスの成績に差は見られなかった。従って、少なくとも本研究で測定した学習機能には異常が生じていないことが示唆された。一方、単純反応時間課題において、運動衝動性の増加および注意障害が見いだされた。遅延価値割引課題では認知衝動性の有無を検証したが、遺伝子改変マウスの成績に異常は見られなかった。これらより、我々の所有する遺伝子改変マウスが注意欠陥、運動衝動性および多動性という認知的特徴を有することが明らかとなった。ADHDの症状には様々なサブタイプが存在すると考えられているが、本研究で用いたマウスでは特に上記症状を特徴とするADHD者のもつ遺伝的、神経形態的特徴が解明できる可能性が示唆された。 さらに、行動解析が当初の計画より順調に進行したため、次年度に予定していた脳神経解析にも着手し、側坐核、線条体、前頭前野の神経画像を蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、当該年度に認知機能の解析、次年度に脳神経形態の解析を予定していたが、認知機能課題を用いた行動解析が当初の計画より順調に進行したため、次年度の計画の一部に着手した。予定より順調に計画が実行できた理由として、認知機能を測定する装置に、オペラント型装置の一種であるインテリケージ(New Behavior AG)を用いたことがあげられる。インテリケージは1ケージで最大16匹のマウスの行動を24時間自動測定することができる。本研究では2ケージ利用することで、効率的にデータを収集することが出来た。また、研究代表者が本研究とは別に行っている研究においても同装置を用いて行動解析を行っている。そのため、その研究で得られたデータを本研究にフィードバックすることで、本研究で用いた各種認知機能課題のプログラムを改善し、より短期間で信頼性のおける行動データを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は認知機能解析でもちいた遺伝子改変マウスの脳神経の形態的特徴を詳細に解析する。マウスの脳にゴルジ染色を施し、移所行動の調整に重要な役割を担う側坐核、運動調整の役割を担う線条体、当該年度に行った認知機能課題の遂行に役割を担っている前頭前野を中心に解析を行う。解析項目として、樹状突起長および樹状突起の複雑性、樹状突起棘の数と形態の分類を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に予定していた行動実験を用いた認知機能解析が当初の予定よりも順調に進んだため、実験動物の維持管理および繁殖にかかる費用が削減できたためである。 脳神経の形態解析のための参考資料の購入と、形態解析のための研究補助の人件費として使用する。
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