研究課題/領域番号 |
25780444
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
村井 千寿子 玉川大学, 脳科学研究所, 科研費研究員 (90536830)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物・物体認識 / 概念的知識 / 霊長類 / 種間比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト以外の霊長類を対象に「生物と物体の認識」について検討する。このような認識は、私たちの認知や行動を支える核知識(物理的知識、社会的知識、生物学的知識など)の形成の土台となる点で重要な認識と言える。霊長類における種間比較から、このような認識の系統発生的基盤の解明、ならびにヒトとヒト以外の種での認識の特徴を明らかにすることを目的とする。 本年度は、対象の運動特性に焦点をあて実験をおこなった。具体的には、「物体は外界の作用なしに自己推進的には動かないが、生物的対象は自己推進的な運動が可能である」ことをニホンザルが認識しているかどうかを調べた。実験手続きにはヒト乳児での方法を参考に、被験体の注視時間を指標とした期待違反事象課題を用いた。1つめの実験では、生物的または物体的に動く2次元刺激のアニメーションを用いた。このとき、物体が外的作用によって動く自然事象と同物体が自己推進的に動く違反事象を提示する。また、生物的対象については自己推進的運動も外的作用による運動いずれも自然事象となる。両事象に対する被験体の注視時間の違いの評価から、どちらの事象も自然事象となる生物的対象に関しては注視時間に差は見られなかったが、物体に関しては事象への注視時間に違いが見られた。つまり、ニホンザルが物体運動に関してその外的作用の有無に注意を向けている可能性がある。また、2つ目の実験では実験者による実演を記録した動画を用いた。ここでは、物体(果物など)が実験者の手によって移動させられる自然事象と、物体が自己推進的に水平移動する違反事象を提示した。結果、両事象に対する注視時間に違いは見られなかった。つまり、この課題においては物体の外的作用による運動と自己推進的運動を区別しなかった。実験1,2での結果の違いは用いた刺激の違いによる可能性が考えられるが、この点については今後の検討が必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験対象となるニホンザルの飼育・実験設備の移動および病死などによりデータの収集に遅れが生じた。また、今後の被験体数の充足が課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
被験体数の確保のため、これまで実験を行っていた施設以外での実験実施の準備と環境整備を進める。そのうえで、データ収集とその分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験の実施ができなくなったため出張費の支出額が計上より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入、出張旅費にあてる。
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