物体と生物の区別は私達の社会的な行動を支える基礎知識である。ヒトでは発達初期からこのような知識が見られる。本研究では、ヒト以外の霊長類がヒト乳児同様に物体・生物を動きの特性から区別するかどうかを調べることで、ヒトの知識の進化的基盤を探る。 実験の結果、ニホンザルが物体の運動には外的な作用を期待するが、生物の運動には外的作用に限らず自己推進的な運動も期待することが示された。これは申請者によるチンパンジーでの先行研究と同様に、ヒト以外の霊長類がヒトと類似した物体・生物の認識を持つ可能性を示唆するものであり、ヒトの社会的認知の背景にある諸知識の起源や霊長類種における知識の特性を考察する助けとなる。
|