研究課題/領域番号 |
25780449
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
則武 厚 関西医科大学, 医学部, 助教 (80407684)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視床下部外側野 / 霊長類 / 報酬 / ドーパミン / 学習 |
研究概要 |
本研究では、中脳ドーパミン細胞へ投射する部位の一つである視床下部外側野に注目し、報酬予測誤差信号が視床下部外側野由来の報酬情報に基づき生成されるという仮説、そして、リスク下の意思決定を左右する報酬確信度や無報酬予測信号が表現されているかを検証することにより、視床下部外側野が多様な環境へと適応し得る報酬情報の集積部位としての可能性を検討する目的で実施された。 本年度の目標であった、報酬確率を操作した古典的条件づけを行ったサル二頭に対し、課題遂行中の視床下部外側野 (lateral hypothalamus, LH) における単一細胞外記録を行った。また、サル一頭からドーパミン (DA) 細胞の単一細胞外活動も記録した。DA 細胞と同様に100>50>0%という順に報酬確率をコードしている細胞群と、反対に100<50<0%という順に報酬確率をコードしている細胞群をほぼ同数発見した。報酬時において、DA細胞と同様に報酬予測と異なって報酬が出た場合に活動する=報酬予測誤差をコードしている細胞群と、反対に予測通りに報酬が来たほど活動する細胞群を同程度発見した。また、報酬が来るまでの遅延期間の間には、報酬が来るか来ないかという不確実な状況で興奮・抑制応答を示す細胞群を発見した。DA細胞からは、これまで過去の研究で報告されているような活動を記録できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標通りに、サル二頭の視床下部外側野から単一細胞外記録を行い、新しい学習理論に応用可能なタイプの細胞を発見した。これらの結果は、視床下部外側野の一部の細胞群が、DA細胞活動のソースとしての役割を果たす可能性が高いことを示している。また、報酬をもらえない確率をコードしている細胞群の発見や、報酬予測通りに報酬が来ると活動する細胞群の発見は、従来のDA細胞による報酬予測誤差を使った学習理論では説明のできない現象を説明するに際し、新しい学習理論の要素を提供する。これらの結果は、日本神経科学大会 (京都) およびSociety for Neuronscienceの年次大会 (San Diego, USA) で発表した。このように計画通り、目的の実験を行い予測通りに結果を得た。順調に進んでいる言える。
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今後の研究の推進方策 |
視床下部外側野から中脳DA細胞への信号の流れを明らかにする。LHの細胞活動が実際にDA細胞活動に寄与しているかを確認するため、DA細胞に投射しているLH細胞を電気生理学的手法にて確定し、その細胞活動を同定する。さらに薬理学的手法によりそれらの細胞を確定しDA細胞活動の変化を見る。 サルの神経活動記録・電気刺激・薬物注入を行いながら目的の視床下部外側野からの神経活動を記録するため、近接した距離で複数の電極を操作できるマニピュレーターを購入する可能性がある。当初は2台のマニピュレーターを同時に使用し、代用する。また注入用薬物はムシモールを予定している。
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