研究課題/領域番号 |
25780452
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
増田 知尋 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 契約研究員 (60449311)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 質感 / 運動知覚 |
研究概要 |
本研究の目的は、視覚的な運動から知覚される様々な質感を規定する要因の特定と、それに伴う質感の知覚法則を明らかにすることである。 2013年度は、質感のひとつとして粘性に着目し、その規定要因について実験的な検討を行った。正方形の主観的輪郭を生じさせる誘導図形の垂直線分を、正方形の頂点を始点として振り子運動させると、上下の振り子運動間の位相差により、主観的な面の素材が異なって知覚されることが示されている (Masuda et al., 2013)。この傾向は、物性研究領域で示されている粘弾性モデルによる記述と類似していたことから、他の性質を持つ素材モデルとの対応を検討するため、粘性のモデルと面の質感知覚との関連についての検討を試みた。実験では、先行研究で非剛体運動が知覚される頻度が高かった位相差30°と90°の運動について、粘性のモデルを参考に振り子運動の振幅と周期をそれぞれ時間的に変化させ、主観的な面の粘性判断への影響を検討した。 その結果、粘性のモデルとの対応が考えられる振幅の変化は、位相差が30°の条件下でのみ粘性判断に影響を及ぼしたことから、位相差により生じる質感判断の違いによって振幅変化の効果が異なることが示された。加えて、どちらの位相差条件でも、時間経過に伴って周期が長くなると面の粘性が高く判断された。一般的な一定応力下での運動を前提とした粘性モデルでは周期は変化しないことから、われわれの質感知覚は、このようなモデルと完全に一致するものではなく、運動中に対象に応力が加わるか対象に運動が発生するような一定応力下でない運動を前提とした特有の傾向がある可能性を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、視覚的な運動から生じる多様な質感について、そのカテゴリの整理と分類を行い、それら質感の動的要因を特定することである。 2013年度は、実験を実施するにあたり、物性に関する研究領域で素材の記述に用いられる物理的なカテゴリと、われわれの判断する質感カテゴリには相違点があることが考えられることから、ヒトの質感判断の実験を行う際の典型的な判断尺度の設定に時間を要した。また、質感を知覚する運動映像の収集について、種々の質感と関連すると考えられる運動とその発生条件が多岐に渡っていたことから、撮影条件の精査に時間を要したため、今年度は実写映像の収集・分析に至らなかった。現在、映像の撮影および動作解析の準備を開始している。 一方で、2014年度に実施予定だった質感知覚の規定要因を検討する心理物理実験に関して、振動モデルのパラメータを参考にして、主観的輪郭図形を用いた実験に着手することができた。 こうした状況から、2013年度の計画は想定よりもやや遅れているものの、2014年度に予定していた実験は既に実施を始めることができたため、現状における本研究の達成状況は、ほぼ計画通りであるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2014年度については、2013年度に引き続き、主観的輪郭図形を用いた動的な質感知覚について、粘性以外のモデルから考えられる運動パラメータを考慮した実験を実施する。また、2013年度に実施予定だった実写映像の撮影・収集と画像解析に関して、系統的に物理パラメータを操作することが可能な素材として、バネ定数の異なる複数のバネを中心とした周期運動の撮影を行い、その映像の画像解析を行う。加えて、この運動から抽出された運動パラメータをCGに組み込み、操作した心理物理的実験の実施により、質感知覚の規定要因の特定を試みることを予定している。
|