2014年度は、前年度に検討を行った粘性以外の質感として、かたさに着目し実験的検討を行った。前年度と同様に、Masuda et al. (2013) で用いた位相差30°と90°の実験パターンを基に、振り子運動の振幅と周期をそれぞれ時間的に変化させ、主観的な面のかたさ判断への影響を検討した。 その結果、かたさ判断については、位相差が30°の条件下でのみ、振幅の変化が影響を及ぼし、振幅の減衰が大きいと減衰が無いときに比べ、面が“かたい”と判断されることが示された。一方で、位相差が90°の条件では振幅及び周期の変化による影響は無かった。 Masuda et al. (2013) によれば、位相差が30°のときに観察される“しなる”素材が、位相差が90°のときには “はためく”素材の運動が観察される。このことから、位相差により生じる質感カテゴリの違いによって、振幅の減衰や周期の変化による効果が異なることが明らかとなった。物理的には、周期は一定応力下においては物体の持つ固有振動数に依存し、時間の経過に伴い変化しないため、動的質感知覚においては素材の物理的特性のみならず運動中に変化する対象への応力を考慮する可能性があることが示唆された。 本研究では、実験パターンとして位相差、周期、振幅の変化を数式として操作したが、実際の運動場面では摩擦や空気抵抗等が付随し、それらが視覚的運動における質感知覚に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで、実際場面における振動運動をモーションキャプチャで測定し、その運動成分を抽出しCGモデルに組み込むことのできる環境の開発を行った。これにより、実際の運動と数式モデルによる運動による質感知覚の差異を検証することが可能となる。
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