研究課題/領域番号 |
25780459
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
添田 祥史 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80531087)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 識字 / 居場所 / 解放 / 親密圏 / 公共圏 / 識字教育 / 成人基礎教育 / ナラティヴ |
研究概要 |
本研究では、「居場所としての識字」と「解放のための識字」の接合可能性について、現場の「声」を整理する作業を通じて明らかにしていくことをめざす。最近の国内の顕著な動向としては、識字実践のもつ居場所や生きがいとしての機能を積極的に評価しようという論調の高まりがある。 一方で、こうした動きに対して留保を求める声もある。部落解放運動やパウロ・フレイレの識字教育論に代表されるような人間解放をめざす運動的側面が、居場所機能を強調する中で脱色されてしまうことを危惧するからである。 本研究の最終的な目的は、両者を架橋する新たな実践モデルを提示することにある。政治学や社会学における「新しい親密圏」概念を援用しつつ、実効性のあるモデル構築をめざす。そうした理論研究と並行して、次の訪問調査を予定している。国勢調査において義務教育未就学者の多い大阪、沖縄、北海道、東京、福岡を調査地として選定した。それら5地域における識字教室や自主夜間中学等への訪問調査を行う。 初年度は次のような成果があった。居場所と親密圏概念の理論研究においては、関連する書籍及び論文を収集した結果、両者を結ぶ鍵となるのが実践におけるナラティヴ(ことば、物語)の生成とその変容過程であるという見解を得た。成果発表は次年度に日本社会教育学会等で行う予定である。訪問調査においては、釧路自主夜間中学「くるかい」への参加的研究と大阪の識字教育に詳しい関係者からの聞き取り調査を行った。成果物としては、釧路自主夜間中学「くるかい」に通う不登校経験者の若者の学び直しの軌跡についての論考を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りの理論研究と訪問調査をおおむね実施できたから。
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今後の研究の推進方策 |
本科研2年目にあたる次年度は、昨年度の研究成果を日本社会教育学会等で発信していくことと並行して、「青春学校」(福岡)、「日の出識字学級」(大阪)、「珊瑚舎スコーレ夜間学級」(沖縄)への訪問調査を予定している。加えて、近年、国策として識字教育の充実に取り組む韓国を訪れ、政策動向の把握と現場の視察も実施する予定である。
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