近年、識字実践のもつ生きがいとしての機能を評価しようという議論の高まりがある。その一方で、居場所機能を強調する中で、人間解放をめざす運動的側面が脱色されることを危惧する声もある。本研究の目的は、「居場所としての識字」と「解放のための識字」との接合可能性について、現場の「声」を整理する作業を通して明らかにすることにある。 本研究の成果は、大きく次の2点である。第一に、現場の「声」を整理する方法論について「翻訳」という観点から整理した。第二に、北九州市における夜間中学増設運動について識字教室内外の連関を明らかにした。以上をふまえて、今後、「親密圏としれの識字実践」という理論モデルを精査する。
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