研究課題/領域番号 |
25780460
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
武内 裕明 弘前大学, 教育学部, 講師 (50583019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 保育者 / 保育観 / かわいさ / 子どもらしさ |
研究概要 |
本研究の目的は,保育者の保育観と子どもらしさ・かわいさイメージの関連性を明らかにすることである。平成25年度には,保育者志望学生に対するインタビュー調査を通じて保育観と子どもらしさ・かわいさイメージの関連を検討した。 対象となった保育者志望学生は保育職を志望するものが中心であったが,同時に他の職業も志望している場合が多く,希望する就職先と保育観を関連付けた検討は行うべきでないことが明らかになった。保育観はや子ども観は比較的同質の部分がある一方で,個人差も大きかった。保育観の共通点としては,子どもが遊び,保育者は見守り・援助を中心として,社会性や協調性,コミュニケーション能力を身に付けていく場所だと考えている点が挙げられる。また,子ども観の共通点としては,かわいさや一生懸命さ,無邪気さ等が挙げられる。 保育者を志望する学生たちのかわいさイメージのうち保育に大きく影響を与えるものとして,子どもにはかわいいものがふさわしい,という考えが存在した。子どもにかわいいものがふさわしいと考えるかどうかは個人差があるが,この認識は実習等を通じて強化されることが示唆された。保育者志望学生は,保育に楽しい雰囲気を与え,全体に興味をもってもらうために,かわいいものを用いるという方略を取っていることが明らかになった。また,一斉保育という制限された場だからこその自由の強調や,子どもたち全員の興味を引き出すため,などの全体に保育者の意思を強いることとかわいいものを用いることには関連性が見られた。一方で,経験の少なさも影響してか,子どもらしさという概念を明確にもたなかった。保育者志望学生にとっての子どもらしさイメージは,子ども像そのものと同一視されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,保育者志望学生の保育観と子どもらしさ・かわいさイメージの関連性の調査であり,保育者志望の大学1年生と幼稚園の教育実習に行った4年生に対するインタビュー調査を行った。調査内容は2つの学会で発表し,2本の論文に結果をまとめている。また,1年生に対するインタビューに関しては論文投稿を検討している。 先行研究などを参考にして保育者志望学生の認知傾向が大学入学段階から異なるかを検討する予定であったが,学生の希望する進路が必ずしも単独ではないというインタビューでの知見をもとに実施を見送った。学生たちは複数の選択肢を4年次程度まで考慮に入れており,希望する就職先ごとの傾向を確認するということ自体が現実を単純化しかねないものであったためである。 一方で,実習生たちは保育場面での制作物に関してMOOKや保育雑誌などを参考にしていた。これらの内容にみられるかわいさや,その意義について確認することで保育者のかわいさイメージに関する考察を深めることに研究予定の内容を変更し,資料収集と整理の段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,十全に保育に参加した保育者の保育観と子どもらしさ・かわいさイメージの関連性に関して検討するために,インタビュー調査を継続する。子どもをかわいいと思うかどうかでは差別化が難しいことが予想され,子どもらしさイメージについては不確定の部分が残るため,「子どもにはかわいいものがふさわしい」という考えと,保育との関連性に関する検討が中心的な課題となる。このような焦点化から,保育に関する方略そのものよりも,保育環境や課題的制作物を含めた検討を行いたい。また,保育者・実習生共に影響を与える製作物のMOOKや保育雑誌に関しても検討を行うことで,研究課題となる意識を促す背景にも迫りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費に一部繰り越しが生じているが,これは発表までに時間的余裕があったため,予定していたテープ起こしの謝金支払の単価を大学院生の雇用により大幅に圧縮したためである。業務を発注した場合には平均的な時間単価で計算すると予算を超える時間数のインタビューを行っており,コスト圧縮の結果次年度使用額が生じた。 次年度も主要な用途はテープ起こしに用いる計画である。予算の効率的使用のために今後も院生の雇用も選択肢に入れるが,時間短縮の必要が生じた場合等は対応できないので,経費として必要である。また,インタビューに関しては,現職の保育者等を対象にするため出張費等の必要が生じる予定である。 その他,最新の研究成果の資料収集のために調査に行く旅費や,研究資料の整理や研究遂行に必要な文房具等,調査に必要な資料などに予算を使用する予定である。また,研究の中で生じた保育関連の雑誌等の影響の検討も行い,研究を充実させたい。
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