本研究は3年計画でニュージーランドにおける就学前カリキュラムと小学校カリキュラムの接続方法、及び、その実態を明らかにすることを目的としたものである。今年度は最終年度であり、追加情報の収集と過去2年で得られた情報の整理(発信)から下記2点を明らかにした。 まず、ニュージーランドの幼保小のカリキュラム接続で用いられている5つのKey Competency(以下、KC)についてである。ニュージーランドで2007年に改定された小学校カリキュラムは、就学前カリキュラムで用いられている理念を基に5つのKCを作成することで接続が図られた。KCについては、これより先にOECDによってそのモデルが示されていたが、ニュージーランドではOECDが示した形を基に自国のスタイルに合う形で修正を加えており、ニュージーランド独自の形態であることが示された。 次に、これら5つのKCを基にニュージーランドで2011年に示された幼保小の接続モデルに対する認識として、政策決定者と実践者との間に乖離が生じていたことが実地調査より示された。この接続モデルに対して政策決定者からは多数の支持が示された。一方、実践場面においては、小学校と保育施設の立地場所の異なりや、連携構築に向けた協同体制が整えられていないことが要因となり、幼保小の接続モデルが十分に機能していないことが関係者の認識より明らかとなった。このような状況を背景に、実践者は評価観の接続、中でも、小学校への移行に伴い「学び(Leaning)」から「学習(Study)」へと性質が変化する評価観に接続の課題を認識していることが示された。 以上のように、ニュージーランドにおける幼保小の接続では、日本と同様の課題が見受けられた一方、KCの作成過程で見られたように、国際的な動向を自国の文化や社会情勢に合わせて受け入れようとする体制は示唆的である。
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