研究課題/領域番号 |
25780465
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高橋 望 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10646920)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新自由主義 / ニュージーランド / PMS / 学校管理職 |
研究実績の概要 |
ニュージーランドはNPM理論に基づく新自由主義教育改革を最も忠実に実行した国として位置づけられる。しかし同国では近年、これまで推進されてきた市場化政策からの転換を指摘することができる。本研究は、政策転換を指向する現代ニュージーランドを事例に、新自由主義型教育改革の全体像の明確化、及び現在政策上の主眼である学校の組織マネジメント能力を向上させるためのメカニズムの解明を課題としている。 本研究の2年目である本年度は、(1)昨年度に引き続き、新自由主義教育改革に関する先行研究の体系的な整理と分析を行い、理論的な検討を行った。(2)本研究の分析視角の1つである学校管理職の養成と研修等に焦点をあて、その実際について分析を行った。(3)分析視角の1つであり、昨年度重点的に検討を行ったPMSに関して、昨年度の研究成果の補完を行うため、追跡調査を行った。(1)については、新自由主義教育改革について包括的に研究しているThrupp教授(ワイカト大学)とWylie博士(ニュージーランド教育研究所)の研究を主な分析対象とした。(2)については、実際に学校管理職の研修を行っているオークランド大学(University of Auckland Centre for Educational Leadership:UACEL)に訪問し、担当者に聞き取り調査を行った。特に初任者校長を対象とする研修(First-time Principals’ Programme)を中心に、任用前にも研修が設定され(National Aspiring Principals Programme)、任用後の研修機会をいかに適切に確保していくかが課題となっていることが明らかになった。(3)については、教員登録を担う機関の改組が企図されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新自由主義教育改革の全体像については、昨年度から継続的に検討を進めており、2008年度前後まで検討を進めることができた。また、学校管理職の研修等については、国全体としての政策の全体像を把握することができ、個別のプログラムの詳細の検討に着手している。より精緻化された分析が求められるが、おおむね計画的に遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度に当たるため、各分析視角からの検討を行いつつ、研究のまとめを行う。 (1)新自由主義教育改革の影響等を総括するため、先行研究の更なる分析を進める。関連資料の購入・収集と分析を行う。また、現地研究者等への聞き取り調査を行い、分析を深める。(2)学校管理職の研修等については、引き続きオークランド大学のUACELに訪問調査を行いつつ、同時に他機関の取り組みについても検討を行い、国としての全体像の把握に努める。(3)これまで教員登録を担ってきた教員審議会(Teachers Council)の改組が予定されているため、新組織の権限、役割機能など、具体的な展開について調査を行い、PMSとの関連を検討する。(4)これまでの研究成果を整理し、まとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用することのできる研究費が生じた理由として、予定していた現地調査の回数を少なくしたことが挙げられる。その主な理由は、訪問予定であった現地研究者の研究状況に変更があったためである。当該研究者とは定期的に連絡を取り合い、すでに研究フォローは行っているが、繰越額が生じた。また、新自由主義教育改革の実相分析にかかり、今年度は総選挙も実施されたことから、2008年度以降の国民党政権の施策に関しての検討を十分に進めることができなかったため、関連資料の購入を見送ったことも関係している。
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次年度使用額の使用計画 |
こうした状況を踏まえ、繰越した研究費は、主に現地調査の旅費に充てる。オークランド、ウェリントンといった当初の訪問先に加え、他都市(クライストチャーチ、ダニーデン、ハミルトン)への訪問を予定しており、また、学校管理職の研修等についても、オークランド大学以外の実施機関への訪問を計画している。そのため、旅費にかかる経費が多くなることが予想される。加えて、関連資料や備品の不足分の購入を行う。また、次年度は本研究の最終年度であることから、研究成果の公表も可能になると考えられる。成果公表のための国内旅費にも繰越分を充てる。
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