研究課題/領域番号 |
25780466
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | テニュア / 身分保障 / 労働条件 / 教員評価 / オバマ政権 / NCLB法 / 義務免除政策 / 大阪条例 |
研究概要 |
本研究の1年目は、研究計画にもとづき、米国における教員の身分保障をめぐる法制度改革に関する研究を中心におこなった。また、日本国内における学校教員の身分保障や労働条件をめぐる法制度改革、特に、自治体レベルにおける条例等を通じた制度改革が著しいことから、日米比較の視点をふまえて分析をおこなった。 米国の教員身分保障法制に関する研究については、米国に特殊な身分保障制度である「テニュア(tenure)」と、その法的根拠となってきた各州のテニュア法の改正動向を検証した。なかでも、各州のテニュア法改正に強い影響力を及ぼしている連邦政府主導の「NCLB法の義務免除政策(NCLB Flexibility)」に関する分析を行った。NCLB法の義務免除政策は、連邦教育省長官が、一定の条件を課すことにより、各州政府を法定の義務から免除(waiver)する仕組みである。そのなかでも教員政策、特に各州の教員評価施策に関しては、強度の条件付けがなされている。この義務免除をうけるための条件設定により、各州は、州内の教員評価における主要な考慮要素として学力テストを利用し、これを教員のテニュア付与の判断や給与等の処遇に反映させる制度改革を求められていることを明らかにした。 日本国内の教員の身分保障、労働条件に関する研究においては、特に大阪府・市の教育関連条例ならびに職員基本条例を分析対象としながら、従来、公務員法によって定められてきた教員の法定身分保障が「切り下げ」られている状況を分析した。 本研究では、米国におけるテニュア法、労働法を基礎とする教員法制と、公務員法に基礎をおく日本の教員法制の法制度上の相違が存在しつつも、教員の身分保障や労働条件に関する切り崩しが両国の政策に共通して行われていることを明らかにしつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究対象としていた米国における教員身分保障に関する法制度研究については、各州法改正の震源である連邦教育省が主導するNCLB法の義務免除政策を明らかにすることにより、法制改革の全体像を明らかにするための基礎作業が十分にできたと思われる。また、日本との比較分析については、当初、本研究期間の後半に行うことを予定していたが、国内の法制改革が著しいことから、これを繰り上げて行うこととした。教員の身分保障をめぐる法制改革、政策が顕著な変動をみせており、これに対応するため、調査実施時期等における多少の前後はあるものの、おおむね順調に研究計画を遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の以降の研究計画においては、これまで明らかにしてきた連邦政府主導の教員政策を前提としながら、各州政府が州内のテニュア法や教員の労働条件に関する州法を如何に改正しているのか、特に、各州で実施される州規模での新しい教員評価が、各教員の処遇、身分保障とどのように結びつけられているのかという具体的な法制度改革について検証を行う予定である。また、連邦教員政策に関しても継続して連邦教育補助金を通じた各州政府への政策的な影響力が行使されているため、これを追跡的に調査する必要がある。日本の教員法制改革についても、今後は自治体レベルに留まらず、国家法を通じた改革に進展する可能性が極めて高いため、日米比較の視点をふまえた研究を継続する予定である。
|