研究課題/領域番号 |
25780466
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テニュア / 身分保障 / 労働条件 / オバマ政権 / NCLB法 / 義務免除政策 / 教育補助金 / 教員評価 |
研究実績の概要 |
本研究の3年目は、教員の身分保障をめぐる法制度に関する研究を以下の二つの観点から行った。 第1に、米国の教員身分保障制度「テニュア(tenure)」に影響を与えている連邦、及び、州の教育補助金政策に関する研究である。1~2年目の研究ではNCLB法の義務免除政策(NCLB Flexiblity)について、主に連邦レベルの政策を分析したが、本年度は、これらの連邦政策をうけて展開されたニューヨーク州の動向を中心に検討を行った。ニューヨーク州では、2015年4月に州教育変革法(Education Transformation Act)が2015-2016年度予算の一部として制定され、同法に定められた教員評価等の実施が、各学区に対する州教育補助金受給の条件とされた。そこでは、教員評価の結果、3年連続で「非効果的」と判定されたテニュアを所持する教員に対して、学区は免職手続きをとることが義務づけられた。本研究においては、州レベルにおける教員法制改革を米国における中央集権化の段階論に位置付けて検討し、NCLB法の制定による第一段階、「頂点への競争」プログラムによる第二段階、義務免除政策による第三段階につづく、第四段階として州が学区に対して教育補助金を通じた介入政策を行いつつあることを検証している。 第2に、日本における教員の身分保障をめぐる法制改革と、日米比較からみた日本的特徴に関する研究である。本年度は中でも、2014年5月に制定され、2016年4月1日より施行される新地方公務員法によって義務づけられた人事評価制度に関する検討を行った。教員をも対象とする人事評価制度は、教員評価に成果にもとづく処遇を導入する点で、米国の教員評価政策と共通する側面を有している。一方、その主眼は公務員の人件費削減にあり、行政改革の一環として新しい教員評価が導入されている点に日本的特徴があることを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国におけるテニュアをめぐる法制度の変動に、連邦、及び、州の教育補助金政策が大きく影響していることを明らかにするとともに、テニュアをめぐる運用の変化を学力テスト政策、および、教員評価政策との関係において体系的に分析することが概ね達成できたと考える。また、日本における教員身分保障をめぐる法制度の変動に関しても、米国との比較をもとにその共通性と差異性について分析することができた。なお、本年度内に米国での現地調査を予定していたが、2016年12月の連邦初等中等教育法改正を受けて同改正法の調査を併せて行うため、翌年度実施に計画を修正し、当該予算についても繰り越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究期間は、日米の教員法制の変動期に重なるものであったため、両国における法制改革に関する追跡調査を中心的な課題としてきた。さらに、2016年12月には、連邦初等中等教育法が14年ぶりに改正され、教員法制に関わる条項についても大きな変化をみることになった。次年度は、この新初等中等教育法に関する分析を進めるとともに、当初予定していたテニュア法の歴史に関する研究を同時並行的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度内に米国での現地調査を予定していたが、2016年12月の連邦初等中等教育法改正を受けて同改正法の調査を併せて行うため、翌年度実施に計画を修正し、当該予算についても繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度実施予定であった現地調査を、改正連邦初等中等教育法の調査と併せて2016年度の前半期に実施する。
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