最終年度は、第一に、教員テニュアをめぐる現行制度改革に関する研究を継続するとともに、第二に、テニュアの法制史に関する研究を行った。 第一の、現行制度改革に関する課題については、教員テニュアに大きな影響を与えている教員評価制度改革について、昨年度の研究対象であったニューヨーク州に加え、ミシガン州を素材とする分析を行った。連邦政府の補助金誘導政策により、ミシガン州においても、教員評価を人事に直結させると同時に、評価結果の主要な構成要素として生徒の学力テスト結果を活用する「制裁としての教員評価」が州法として形成された。しかしながら、この州法を実施する段階においては、「職能開発としての教員評価」への制度目的の変化がみられ、教員評価における学力テストの活用においても、一定の制約がかけられることとなった。本研究においては、州知事によって設置された審議会による教員評価制度改革の「方向転換」に着目し、その後の州議会での審議を経て、如何に2015年州法の再改正へと結実したのか、また、この新法にもとづいて如何なるガイドラインが州教育省に策定されたのかについて分析を行った。 第二の課題である教員テニュアの法制史については、1886年にマサチューセッツ州で成立した全米最初の教員テニュア法の成立過程について着目すると同時に、各州にテニュア法が制定される際の立法事実を明らかにした。一般的な労働契約と異なる特殊ルールとして、公立学校教員の身分を保障するテニュア法が、如何なる理由にもとづき成立し、20世紀の半ばまでに、ほぼすべての州で採用されことになったのかについて検討を行っている。また、初等中等学校教員における「テニュア」は、高等教育機関における終身雇用権を意味するテニュアと異なり、教員解雇におけるデュープロセスを義務づけるものであるため、各州のニュア教員の解雇手続きの形成に関する分析を行っている。
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