本研究は、戦後初期の子どもや青少年を取り巻く社会・生活・文化とのかかわりにおいて生起していた諸問題の歴史を、主として教育関係者の取り組みに着目して明らかにすることを課題とする。最終年度の2016年度は、1950年代から60年代にかけての千葉県銚子・九十九里浜沿岸の漁業地域における子どもの長期欠席問題や基地問題に関する資料収集・調査を行った。 第一に、1950年代の漁村の子どもたちの長期欠席対策をテーマとしたドキュメンタリー映画の舞台となった、銚子市の公立中学校の卒業生のもとを再訪し、補完的な聞き取りを行うとともに、学校在籍当時の関連写真のコピーの提供を受けた。第二に、上述のドキュメンタリー映画の製作会社を訪問し、当該映画に関する所蔵資料数点と、映画撮影時のスチール写真などを入手した。その際、研究発表等における写真や画像使用時の注意事項や申し合わせを行った。関連して、当該映画のプロデューサーの自叙伝的著作の内容もあわせて検討した。第三に、銚子市および旭市において関連資料の調査収集を行った。まず、銚子市公正図書館および旭市役所において広報バックナンバーを閲覧し、1950年代から60年代までの子どもの長期欠席問題に関する記事等を調査した。次に、千葉県議会図書室所蔵の議事録を閲覧し、千葉県議会における長期欠席問題、基地問題、漁業問題に関する質疑応答の記録を調査した。第四に、旭市の公立中学校1校の所蔵資料調査を実施した。学校沿革誌をはじめ、1950年代から60年代にかけての当該学校の「長欠対策」関連資料のコピーを入手した。 以上の研究調査により、1950年代の漁村の中学校における補導学級の研究に関する映像・写真資料の活用について実現の見通しが立った。また、千葉県の長期欠席に対する施策の経緯をより詳細に明らかにすることができた。本研究の成果は、いずれ共著として発表予定である。
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