研究課題/領域番号 |
25780470
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
黒田 友紀 静岡大学, 教育学部, 講師 (60631851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 学校改善 / キャパシティ・ビルディング / 授業改善 / 学校文化 / 教員政策 / アカウンタビリティ / 米国 / 国際情報交換 |
研究概要 |
キャパシティ・ビルディングに基づく改革の理論の解明のために、まず、「成績不振校」に関する介入やその方法について文献調査とその分析を行った。その際、「評価・スタンダード・テストに関する全米研究センター」と「全米知事協会」等の報告書を中心に、これまでにキャパシティ・ビルディングを中心に改革を進めた州や学区の事例を収集し、学校改善の条件や要素を整理した。これらの研究成果については、日本比較教育学会第47回大会において報告した。そして、キャパシティ・ビルディングの方策として、授業改善と学校文化の醸成に焦点を当てた事例を整理して日本教育方法学会第49回大会において報告を行った。ノースカロライナ州の事例については、研究会を開催し、教師教育改革に詳しい研究者から情報の提供と共有の機会を得た。 オバマ政権下における学校改善の実態については、インターネットおよびメールにて、情報収集を進めた。現在進行している教員政策のなかで、いかにに学校力と教師の専門性を高めるようなキャパシティ・ビルディングにつなげていくかを課題として、日本教育制度学会第21回大会の課題別セッションの報告を行った。また、学校改善の手法として現在オバマ政権下で推進されている「ターンアラウンド」について、連邦政府の政策の分析とマサチューセッツ州での展開についての分析を進めた。 米国のみならず、日本における「学校力」を開発する学校改革について検討するために、小学校および中学校で、授業研究と校内研修を軸として学校改革に取り組んでいる学校を参観した。また、学校改革に取り組まれた元校長の経験と知見を研究会にて提供頂き、大学院生を含め議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、次年度以降の実際に調査に向けた、文献収集と情報収集を主に行った。 文献収集に関しては、これまでの学校改善に関する研究、事例の収集と、学校改革の理論の解明を中心とした研究活動を行った。特に、キャパシティ・ビルディングの手法が多く用いられていた1990年代の資料については、図書館およびインターネット等も利用しながら著書および論文を収集した。しかし、各州の事例などは、現地でなければ収集できない資料もあり、次年度の現地での調査が必要である。また、キャパシティ・ビルディングの成功例から導き出される要素については整理を進めることができたが、理論の解明にはまだ至ってはいない。90年代後半以降、アカウンタビリティを重視する政策が進められる中で、キャパシティ・ビルディングの手法自体は減少したようにみえるが、オバマ政権の学校改善を進める政策のなかで、学校組織の改善が注目されている。本年度は、連邦政府のNCLB法の遂行免除(NCLB waiver / NCLB flexibility)における、学校改善に関する資料の収集と分析を進めることができた。 次年度以降の調査に向けて、マサチューセッツ州教育局の学校改善支援チームのスタッフからマサチューセッツ州における学校改善に関する基本的な情報や報告書を提供して頂き、基本的な情報を得ることができた。また、マサチューセッツ州立大学の教師教育領域の研究者とも情報交換を継続している。現在の改革の情報収集および調査に関する基本的な情報収集に関する本年度の課題は、想定していた以上に進めることができた。以上の研究活動より、平成25年度の課題は概ね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究活動については、まず、昨年度に引き続き、文献の収集とその分析を行う。とくに、マッセル(Diane Massell)、キング&ニューマン(Bruce King & Fred Newman)、エルモア(Elmore Richard)らのキャパシティ・ビルディングについての論考の収集とその分析を行い、キャパシティ・ビルディングに基づく改革の理論を明らかにする。とくに、エルモアの著書および論文における、キャパシティ・ビルディングや互恵的なアカウンタビリティに焦点を当てて理論を分析する。 90年代後半以降、アカウンタビリティを重視する政策が進められる中で、キャパシティ・ビルディングの手法自体は以前ほど注目されなくなっていたが、オバマ政権の学校改善を進める政策のなかで、教員政策と併せて学校組織の改善が注目されている。むしろ、いかに効率的に学校改善を進めるかが求められており、キャパシティ・ビルディングの手法は現在でも有効な手段であると考えられる。そのため、キャパシティ・ビルディングに着目して資料収集を継続する。 平成26年度は、学校改善の実態を検討するために、マサチューセッツ州での調査を計画している。同州は、成績不振校に対する改善措置の導入は遅い州ではあるものの、州教育局が教育のエキスパートである元教育長や元校長と州内の教育組織による協働チームを構成して学校改善を行っている。調査では、学校改善チームのメンバーへの聴き取り調査および、州教育局での聴き取り調査も行う予定である。また、エルモア氏に対して、アカウンタビリティを重視する改革が進む中でのキャパシティ・ビルディングおよび学校改善に関するインタビュー調査を予定している。併せて、現在のオバマ政権下における学校改善の動向を分析するための資料の収集を行い、その分析も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の物品費について、想定よりもラップトップコンピューターの価格が安価であったこと、旅費については、関東の出張については自宅に宿泊したことから、想定よりも支出額が少なかった。 次年度は、物品費として、調査で使用するデジタルカメラその他周辺機器等に支出予定である。また、旅費として、学会報告(日本教育学会・日本教育制度学会、日本教師教育学会)、米国調査・資料収集、日本の学校改革の調査を行うために、助成金を支出予定である。
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