研究概要 |
本研究の目的は、ガダマー(Gadamer, H.-G., 1900-2002)の哲学的解釈学を中心とした現代の解釈学を人文主義と啓蒙主義の再評価という観点から再検討することにより、グローバル化した社会における一般教養の教育の可能性を提示することにある。その主要な論点は、次の三点である。一、「知識人と大衆」という二項対立が失効した現代において一般教養の語り方を探る。二、差異や異質性の経験を内包したポストモダン的世界において、異なる伝統文化を背景とする他者と連帯しつつ共生可能な社会を実現するために、一般教養の教育の可能性を探る。三、他者との対話という観点から、哲学的解釈学の現代的意義を再検討する。 このような研究目的を達成するため、本研究ではまず、ドイツにおける一般教養の理論に関する先行研究を収集し検討した。特に、OECD-DeSeCoのキー・コンピテンシーの構想やPISAのリテラシーの構想がドイツの一般教養の理論に対して与えた影響について、クラフキー、テノルト、ヘレカンプスの諸論を翻訳しつつ解明した。次に、哲学的解釈学に基づく一般教養の理論に関する資料を収集し翻訳した。特に、フェアフィールド編『教育、対話、解釈学』(2011)を手がかりに、哲学的解釈学に基づく一般教養の理論の意義と問題点を明らかにした。そして、このような作業を通して、異なる伝統文化を背景とする他者との対話という視点から、一般教養の教育の理論を新たに構想するための基盤づくりを進めた。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度9月に予定していたドイツでの情報・資料収集が大学の行事と時期が重なったため次年度に延期した。結果として、その分の旅費が未使用のままとなった。 また、購入予定の図書のうち、国内で安く入手できるものについては私費で購入したため、その分の図書経費が未使用のままとなった。 次年度使用額494,000円と翌年度分として請求した額100,000円を合わせた594,000円の使用計画は次のとおりである。ドイツでの情報・資料収集に関連する旅費400,000円、国内の専門学会での発表や情報交換に関連する旅費100,000円、解釈学や教養教育に関連する図書経費80,000円、その他消耗品、資料複写費、通信費として14,000円。
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