本研究は、子ども・若者を対象とする公共事業における社会教育的評価を検討することにある。とりわけ子ども・若者のための余暇的文化的公共教育施設・事業の適正な評価を考えるべく、イギリスの類似施策であるユース・センター/サービス/ワークの評価指標に注目し、研究分析を進めてきた。 今年度は12月に現地調査を行った。本研究の初年度に現地調査でヒアリングした評価指標開発者を再訪し、2013年以降の評価をめぐる施策動向や研究展開について調査した。結果、政策動向については、ブレア政権時に導入されたユースサービスに対するオフステッドによる監査は既に停止しており、2015年にはユースサービス担当官の配置もなくなったこと、オフステッド導入に併せて利用が始まった評価報告書「Joint Area Review」も現在では使われていないことが明らかになった。研究展開については、インタビュイーらが開発したユースサービスの評価指標「社会的感情的能力群」の活用状況も把握することができた。なお「社会的感情的能力群」は本研究代表が本研究の2015年度調査によって明らかにした指標である。 また今年度の調査によって英国イングランドにおいて1940年代来の歴史を持つ、民間のユースサービスを統括してきた中間支援団体である「全国民間ユースサービス協議会(以下、NCVYS)」が2016年3月に解散し、NCVYSが担っていた各種機能が複数の民間団体に分散して継承され、民間のユースサービス/ワークに関する評価開発については、民間団体アンビション(Ambition)が引き受けることになった事実が明らかになった。 今回の渡英調査ではアンビションが開発したユースサービス/ワークのための評価指標も入手でき、本研究を継承する研究資料を得ることができた。今後、自治体が運営するユースサービスのための評価指標との比較研究を進める予定である。
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