平成26年度の研究によって得られた成果は、1)教科書における「学習課題」の分析枠組みの開発、2)分析枠組みにもとづく日独教科書における「学習課題」の分析の実施、3)分析枠組みに基づく授業分析への応用可能性の指摘、の三点にまとめることができる。分析枠組みは、ドイツの一般教授学研究の知見をもとに、「三つの知識」観(宣言的知識・手続き的知識・メタ認知的知識)を中心的な分析項目として、診断課題・学習課題・検証課題の三つのタイプの課題を分析する枠組みを提示した。この分析枠組みに基づいて、日独の教科書26冊を対象に(5~7年生、国語・ドイツ語、算数・数学、理科・自然科学)、「学習課題」の分析を行った。その結果、「三つの知識」観に着目した分析として、学習課題の提示には三つのパターンがあることを指摘した。すなわち、①「手続き的知識→宣言的知識→検証課題」という配列のパターン、②「学習課題(手続き的知識)→説明」という配列のパターン、③「説明→学習課題(宣言的知識)→説明」という配列のパターンである。さらに、「メタ認知的知識」に関わる学習課題が、日本の教科書には少ない点も大きな特徴の一つであることを明らかにした。これらの研究成果は学会発表および論文執筆を通して公開している。また、この「三つの知識」観に基づく教科書における「学習課題」の分析は、授業における課題提示とまとめの提示の場面にも応用可能であることを指摘した。すなわち、授業開始時の課題提示が「手続き的知識」であるのに対して、授業終了時のまとめの提示では「宣言的知識」となってしまうことによる、授業において習得されるべき知識のズレが存在することを指摘した。
|