研究課題/領域番号 |
25780479
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
楠山 研 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 華人の教育 / 就学前教育 |
研究実績の概要 |
第2年度である平成26年度は、前年度から引き続き研究の枠組み作成のための情報収集と訪問調査を実施した。訪問調査地は当初の計画通り北米西部地区とし、事前にこれらの地域の一般的な教育の現状および華人の居住状況や教育の現状について情報収集を実施した。その結果、NCLB法以降、バイリンガル教育への視線が厳しくなるなか、移民を多く抱えるカリフォルニア州において中国語を含むバイリンガル教育を実施している教育機関・施設に焦点を当て、学校、政府、地域という視点から分析をおこなった。 公立のB小学校は「中国語英語バイリンガルイマージョン教育プログラム」を導入し、成果をあげていた。州や学区のスタンダードを遵守し、これを活かした中国語版カリキュラムの作成へ向けた努力をしつつ、結果責任の1つとして学力テストで優秀な成績を上げていた。一方、貧困家庭支援を目的とするヘッドスタートプログラムの実施拠点である就学前教育施設であるK施設は、広東語という特殊な言語を含むバイリンガル教育施設の継続的な運営を可能にするために、大学などと連携しながらプログラムの説得力を高め、国、州など各レベルのファンドを獲得していた。これらは、教育機関・施設が生き残っていくために必要な当局との連携ということができた。 また、B小学校での新しいプログラムの展開は、地域環境の変化と同時に進行し、結果としてそれがマッチし、入学希望者を増やすことにつながっていた。K施設では、保護者を支援する中で、教員として見込みがある人材と判断した場合には、施設負担で資格をとらせ、採用していた。これは移民して間もなくで就職が難しい保護者への支援策であるとともに、施設を継続的に運営していくための人材確保という役割も担っていた。これらは、バイリンガル教育を地域に理解してもらう中で行われることであり、地域社会との相互作用ということができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、華人という共通の視点から、各国・地域の教育システムの核となる部分を明らかにするとともに、世界中で普遍的に求められる力を見いだすことである。基本的には情報収集と現地訪問調査を柱としている。 この観点から、第2年度である平成26年度は、主に北米西部地区に対象を絞り、事前に当該地域の情報収集を実施した上で、今回はバイリンガル教育という視点を定めて調査を実施した。調査対象の選択、アポイント、実際の訪問が順調に進み、一定の成果を得られたことから、現在のところ本研究はおおむね順調に進展しているということができる。 具体的には、英語を重視する風潮の中、公的な教育機関で中国語を教えるために、地域との連携や公的機関との連携が不可欠であることを確認でき、これらを論文としてまとめることができた。また比較対象として訪問した日本の補習授業校は、華人学校との共通点、相違点が明確に表れており、今後も継続すべきものであると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
第1年度、第2年度の研究はおおむね順調に進んだため、今後もこの方向で継続していきたいと考えている。これまで2年は北米を主たる対象として、華人の教育の状況を固めてきたが、第3年度はオセアニア地区、第4年度はヨーロッパが対象となり、比較という視点をより明確に持って進めていくことが必要になる。代表者がこれまで実施してきた中国および東南アジアの華人研究、北米における華人研究というベースに、オセアニアやヨーロッパの知見が加わることで、本研究の目的の核となる部分に迫っていきたいと考えている。 よって、これまでと同様、幅広い視点をもって情報収集を継続するとともに、訪問調査については、事前の調査により焦点を絞って対象を選定し、明確な方向性を定めていきたい。研究全体としても後半に入ることから、研究全体の成果を見据えつつ、進めていきたいと考えている。
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