平成28年度は最終年度となったため、これまで着手してきた研究内容を外部に向けて報告すること、論文として公表することを主たる活動とした。 活動の第一に挙げられることは、学会において研究成果の発表をしたことである。札幌で開催された日本教育学会第75回大会において、企画報告となるラウンドテーブル報告を実施した。「「履歴史料」より覗き見る近代日本人の学びとキャリア形成」と題し、池田、研究協力者である山下廉太郎氏(名古屋大学)、および外部協力者として松尾由希子氏(静岡大学)の3名で報告した。司会は関連研究を過去に進めてきた花井信氏(静岡大学名誉教授)に依頼した。日本教育史に限らず、現代のキャリア研究や海外の履歴研究を専門とする研究者など、多分野からの参観者を得ることができた。 活動の第二に挙げられることは、論文の公表と取りまとめである。論文の公表については、学会誌に投稿し、査読の結果、掲載となった(「中学校と「同等」とされた学校および課程の認定基準と範囲―1899年「公立私立学校認定ニ関スル規則」までの判任文官任用制度より」『日本教育史学会紀要』第7巻)。また、成果の取りまとめとしては冊子体の科研費成果報告書の作成をした。助成期間において公表した関連成果に加え、収集した史資料の一部を翻刻したりリスト化して所収した。また、公表した論文の補遺となる小論も所収した。 4年間の研究期間において実施した研究成果を分類すると、(1)「研究の経過、課題、展望」に関わる研究指針に関する分野、(2)学びの過程とキャリア形成を論じるための方法論、史料論に関わる分野、(3)判任文官の任用制度に関わる分野に分けられる。今後も収集した履歴史料のさらなる分析を進めて、近代日本の地域エリートのリテラシーとその形成過程について明らかにしていきたい。
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