本研究の目的は、ドイツの中等学校制度が三分岐型から二分岐型へと再編されるに伴い、教育評価制度がどのように変容しているのか、その変容課程を構造的、実証的に解明することである。本年度は、関連文献や政府文書による情報収集を継続しながら、バイエルン州、ラインラント・プファルツ州、ノルトライン・ヴェストファーレン州、バーデン・ヴュルテンベルク州およびニーダーザクセン州において現地調査を実施し、教育評価制度の変容について、バンベルク大学での研究討議を通してドイツ全体の改革動向を統一的に把握しようと試みた。またこれらの成果を順次、日本比較教育学会、ヨーロッパ教育学会(ECER)、世界教育学会(WERA)および中国四国教育学会において発表した。 ドイツ全体の改革動向として言えるのは、ドイツにおいても単線型制度のメリットが理解されつつも、伝統的な三分岐型の修了資格制度を維持しているため、従来の分岐型制度を急に変えるわけにはいかない。したがって、初等の基礎学校の単線型制度を中等段階まで延長し、生徒の進路変更をより柔軟なかたちで認める方策が採用されつつあるということである。すなわち、分岐型制度は弾力化するけれども、弾力化しても分岐型そのものは維持していることがわかった。他方、教育評価制度の変容は、修了資格制度が三分岐型を維持しつつも、選抜制度の複線化が進んでいることがわかった。ドイツでは生徒の進路選択において保護者の決断が尊重されるが、それでうまくいかない場合の選抜方法が、従来の学校の成績だけではなく、複数の選抜方法が準備されつつあるのである。
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