研究実績の概要 |
平成27年度は、前二年の研究過程を踏まえて、以下の二つのテーマに重点的に取り組んだ。①ジョン・マクダウェルの「第二の自然」をめぐる議論(やその教育的側面に着目しているデイヴィド・バクハーストの議論)が、従来の教育哲学の理性や規範に関する議論や問題設定とどのように折り合い、何を新たに付け加え得ているのかについて、より詳細な分析を行うこと;②寄り合い所帯的で非対話的な「学際性」を超えて、教育研究を理性と規範性という観点からより相互連関性のある学際研究としてくみ上げるための土壌を提供し、学際的教育研究の今後の方向性を示すこと。 ①に関しては、Paul Smeyers(編)The International Handbook of Philosophy of Education (Dordrecht: Springer)における‘Nature-Nurture’の章を執筆中である。 ②に関しては(やや派生的だが)、多くの教育研究が直面する学問の自立性、親学問との関係、実践への影響力というテーマについて教育哲学を範にとって考察した論文がPhilosophical Inquiry in Education: The Journal of the Canadian Philosophy of Education Societyに掲載予定である(受理済み、2016年、vol. 24、印刷ページ未定)= ‘No Need to Worry: Multiple Profiles of Philosophy of Education in, and in Relation to, the World of Education and the World of Philosophy’)。この論文では、学際的な教育研究を現実のものにしていくためには、テーマへの意識だけでなく、「だれがaudienceであるか/あり得るか」という(各個別教育研究に従事する研究者があまり意識することのない)観点が欠かせないことを論じた。
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