本研究では、小学校教員養成課程において書字能力が重視されない背景を探るため、近代学校成立以後の「習字」、「書キ方」などの書字教育の意義について歴史的に分析することを試みたものである。その方法として、おもに明治初期から大正期にかけて教育課程および教授法書の分析を行った。その結果として、(1)学制期における「習字」の質的な転換がなされたこと、(2)「習字」の教育的価値は)明治20年代前半に最も低下し、その後、言語教育としての意義が見直されて再評価されたこと、(3)大正期における国語科「書キ方」が実用偏重ではなく、芸術教育、言語教育として幅広く捉えられていたこと、の3点について確認した。
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