研究課題/領域番号 |
25780490
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
渡邉 大輔 東京都市大学, 共通教育部, 助教 (90636193)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 授業プログラム / 教育内容・教材構成 / 科学的認識の原動力 / 理論と実践の矛盾 / モデル / 直観性 / 化学変化 / 原油の分離技術 |
研究概要 |
本年度は,1)原油の分離技術に関する技術史的・認識論的考察,2)分子モデルの文献の検討を中心に進めてきた。 本研究課題の遂行に向けて検討した中心文献は,岩崎允胤・宮原将平『科学的認識の理論』(大月書店,1976年)およびシトッフ「モデルの認識論的機能」寺沢恒伸・林礼二(編)『現代ソヴィエト哲学 第七集』(合同出版社,1962年)である。 1)については,岩崎・宮原の検討により,分離技術を認識論的に考察した。これによれば熱分解技術とは,ガソリンを再生産するだけでなく,これまで自然に存在していなかった不飽和炭化水素をも新たに生産する実践である。さらに石油化学工業の巨大な発展は,不飽和炭化水素中の二重結合を化学変化させる実践と,そこで得られる化学変化の基本原理の認識によって基礎づけられている。この検討から,区別に値する物質群として熱分解精製物を選択するとともに,精製物の変化の有無を通じて区別を導き,化学変化の基本原理を導入する立場を得た。 2)については,岩崎・宮原およびシトッフの検討により,弁証法的唯物論の見地からモデルの認識論的機能を整理した。科学的認識の原動力には「理論と実践の矛盾」が存在する。この矛盾を媒介にして(実践の可能的解釈としての)モデルを導入する必然性が発生する。このときモデルの直観性は,けっして神秘的でも無媒介な閃きでもなく,先立つ認識,経験の蓄積によって媒介される。そして直観は「仮説の定立」としてさらに展開され,実践によって検証される。この検証を経てはじめて先立つ直観は真理性を獲得する。以上の分析視角によって,問題群の検討を中心とする研究方法論の正当性を裏づけるとともに,1)で検討した内容をモデル導入の見地から位置づけることができた。 この成果をもって次年度は,すでに具体化した授業プログラムによってアクション・リサーチを行い,実証研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的と実践可能性に照らして,教育内容をもっとも適切に具体化する教材の作成が必要である。 そこで平成25年度は1)原油の分離技術に関する技術史的・認識論的考察,2)分子モデルの文献の検討を中心に行い,授業プログラム「炭素化合物の化学-第1部:原油の分離術-」の教育内容・教材構成を行うことができた。 現在「第2部:化学変化の基本原理」の核となる「化学変化のモデル」について予備的考察を終え,授業プログラムの開発に本格的に着手しつつある。同時にこれらの研究成果を平成26年度中に公開できるよう学術論文・学会発表の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果をもとに平成26年度は授業プログラム「第2部:化学変化の基本原理」の開発を行い,高校での実験的授業の実施と評価を中心としたアクション・リサーチを行う。この作業を通じて,生徒の理解・習熟度,生徒による授業の評価によって,授業プログラムに盛り込んだ教授仮説の妥当性を検証する。さらに必要に応じて授業プログラムの改訂を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
多少の残額は生じたが,研究は予定通り遂行できた。 消耗品の支出に充てる。
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