平成27年度は本研究において取り組んできた各市町村の事例調査について研究成果を論文として公表することができた。 平成17年度から生徒指導専任教員の配置を進めてきた大阪府箕面市の事例について市議会における議論を検討した。箕面市議会では議会と首長が対立する中で、首長提案の少人数学級編制にかかる予算が、市議会の修正によって全額生徒指導専任教員の配置へと付け替えられたものである。その市議会における議論についてそれぞれの政策のエビデンスはどのように捉えられていたかという視点から分析した。その結果、両者ともに十分なエビデンスが備えられていたものではないが、より妥当と考えられた生徒指導専任教員の政策が議会多数派の指示の下、成立したことを示した。 また、茨城県総和町において平成15年に教育課程の一環である学期制改革について、首長が教育委員会の施策を後押しした事例を検討した。総和町では年間を通じて一つの学期とみなす「通年制」を教育委員会事務局の発案によって、平成15年度から実施することを目指していた。この取り組みは当時の町長が後押ししたものの、議会と首長が対立していたことを背景に、町内の世論が通年制反対へと向かい、最終的に通年制は導入できなかった。論文ではこの通年制政策の予算がないという性質に着目し、予算がない教育政策に議会がどのようにかかわりうるかという点を論じた。 さらに、昭和47年度より独自の費用負担で教員雇用を進めてきた旧A町の事例について検討した。旧A町では昭和47年度から独自に費用を負担し、教員の雇用を進めてきていた。その背景には山間部で過疎化が進む学校において、複式学級が生じる見通しとなって、その対応を求める請願があったことを確認した。論文ではそのほか予算関係資料、当該都道府県教育委員会との交渉の様子なども検討の対象とし、政策導入当初の施策の決定過程を明らかにした。
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