研究課題/領域番号 |
25780498
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
渡邉 由之 武庫川女子大学, 教育研究所, 助手 (40611348)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育実践 / 子ども理解 / 教師の生活史・教育実践史 / 教育思想 / 臨床教育学 / 教師教育・教員養成 |
研究概要 |
今年度(2013年度)は、次の三つの研究・調査活動のもと、計画を進めてきた。 ①恵那調査・訪問:丹羽徳子氏への聴きとり調査、恵那教育研究所及び恵那市立中央図書館での資料確認、恵那での研究会参加。②丹羽実践に関する記録・資料の再生作業:千葉大学教育学部が保存する資料の確認・整理・保存、その後、武庫川女子大学で同作業を進行。③研究発表・論文執筆:日本教育学会・日本臨床教育学会での研究発表、論文「子どもを支えることば、自己の世界にふれる実践 子ども理解としての生活綴方教育」の執筆。それぞれの活動内容は下記の通りである。 ①においては、本研究が目指す丹羽実践の全体理解のために、丹羽徳子の生活史・教育実践史の聴きとり調査を行った。8月と12月の2回にわたって行った聴きとりからは、約40年の教師人生において実践史上のメルクマールが見出された。また、聴きとり調査と並行するかたちで、丹羽徳子の教育実践年表を作成した。なお、恵那教育研究所への訪問及び保管資料の確認では、丹羽実践と同時代の教育実践資料(石田和男の実践記録等)や恵那の生活綴方教育に関する歴史的資料の多くを確認することができた。 ②においては、千葉大学教育学部に保管されていた丹羽実践資料を、武庫川女子大学教育研究所に一時保管しながら、資料の整理・再資料化・保存といった「再生作業」を進めてきた。また、追加資料を丹羽本人から預かることもできた。次年度以降は、再資料化と保存の作業を集中的に進める予定である。 ③に関しては、これまでの研究活動を通して、全体的に「丹羽徳子の教育実践の今日的意味」について考察してきた。今年度は、今後の研究展望を描くために、丹羽実践を説明しうる概念の検討に着手した。現時点での到達は、日本教育学会第72回大会、日本臨床教育学会第3回大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究の達成状況は次の通りである。 当初の活動計画通り、丹羽徳子の教育実践記録の収集・整理・保存(再生作業)は、全体計画の1/2を完了することができた。また、丹羽への聴きとり調査も2回実施することができ、教育実践の理解に必要な生活史・教育実践史の語りを得ることができた。現在、丹羽実践資料の講読と生活史・教育実践史の語りの吟味を突き合わせながら、その教育実践の全体把握を進めている。 なお、当初の研究目的では、1960年代~90年代の教育実践を中心に据えていたが、教師の教育実践の母胎には、その教師自身の生活史(地域・時代・家族を含む)があることが再認識された。よって、現在は、丹羽の幼年期から若手教師までの1930年代~50年代にも着目している。 また、研究目的の核である丹羽徳子の教育思想の総合的考察については、現在、それにつながる研究資料が蓄積されており、その点では、当初の予想を上回る達成状況といえる。一方、この一年は、丹羽実践研究の焦点課題を挙げることに取り組み、それらを中心とした報告を関連学会で行い、そこでいくつかの重要な指摘を得た。こうした焦点課題は、今後も検討する必要があるが、この一年を通して本研究の理論的考察につながる視点を得ることもできた。次年度以降は、研究の核心である丹羽徳子の教育実践・教育思想の理論的研究に取りかかる。
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今後の研究の推進方策 |
今後においても、①恵那への訪問調査、丹羽徳子への聴きとり調査、②丹羽実践記録の再生作業と資料講読、③研究課題の設定・吟味、理論的研究の推進、論文執筆及び学会発表、これらの研究活動を計画的に推し進める。 丹羽実践記録に関しては、その再生作業を完了し、関連資料の整理を進め、それらを実践年表に結実させる。聴きとり調査及び語りの吟味については、本研究に見合ったNarrative based approachの方法を構築させ、調査(追調査)・テキスト化・叙述(文体づくり)・考察といった流れで作業を進める。理論的研究及び全体考察については、先行研究者の協力を得ながら、本研究の課題と方向性を見定め、論文として結実させる。 以上の推進方策のもと、今後の研究を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究活動を経て、教育実践記録や関連資料の整理・保存のための消耗品、調査活動の充実、聴きとり記録集の編集・製本等、研究上必要となる作業・活動が、当初の計画以上に見込まれることとなった。こうした作業・活動を円滑に実施するため、次年度使用する研究費を今年度の研究費の一部から準備することとした。 次年度の研究費の使用計画は下記の通りである。 物品費:387,860円(教育実践記録・関連資料の整理・保存のための消耗品、研究活動に必要な機器・物品・書籍等の購入)、旅費:360,000円(恵那での訪問調査・聴きとり調査、関連する研究会・学会への参加等)、人件費・謝金:90,000円(専門的知識の供与への謝礼等)、その他:126,000円(聴きとりデータのテキスト化(テープ起こし)、資料郵送費、会議室使用料、レンタカー使用料等)
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