本研究では、文献調査や聴きとり調査をもとに、小学校教師・丹羽徳子の教育実践(生活綴方による教育実践)を考察した。そして、丹羽の教育実践に内在する教育思想を明らかにするために、「生活史」という概念を用い、丹羽実践を子どもが相互に生活史を交流する実践と位置付けた。子どもの生活史は、かれらの自己に関する語り(narrative)や自己を創るための物語(story)と深く関係している。丹羽実践は、これらの人間的活動を含み込みながら、子どもの成長を支えていたと考える。 今後の研究では、先行研究の到達を踏まえながら、丹羽の教育実践と教育思想の構造を明らかにするための概念を見出し、それらの検討を重ねたい。
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