本研究では、連邦政府の一組織である中等後教育改善基金(以下、FIPSE)と州政府との関係においてFIPSEがどのような役割を果たしていたのか、その意義と限界を明らかにすることを目的としている。本研究をめぐっては、FIPSEと州政府との関係を規定した法令の概要を指摘した申請者の研究がみられる程度であり、この規定が定められた経緯やその後の展開過程について明らかにはされていない。 そこで研究当初は、FIPSEと州政府の関係がどのように規定化されたのかを明らかにしてきた。 これを受けて最終年度は、上記の目的の内、FIPSEと州政府との関係に関する規定がどのように展開したのかを明らかにするため、次のような研究課題を設定した。第1に、1972年教育改正法(Education Amendments of 1972)が成立した後に、FIPSEと州政府の関係がどのように形成されたのかを検討し、第2に、1980年教育改正法(Education Amendments of 1980)の制定過程において、どのような議論がなされたのかを分析し、第3に、1980年教育改正法の成立後から1992年改正高等教育法(Higher Education Amendments of 1992)の制定に至るまでの動向を考察した。 研究の結果、次の3点が明らかになった。まず、1972年教育改正法の成立後、FIPSEと州政府の関係が法制的のみならず実態的にも機能していたことである。次に、1980年教育改正法において、州政府に関する規定は修正されたものの、FIPSEと州政府の関係に関する規定自体に根本的な変更は加えられなかったことである。そして、1992年改正高等教育法の制定によって、FIPSEと州政府の関係が法制度上消滅したことである。
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