研究課題/領域番号 |
25780504
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 高田短期大学 |
研究代表者 |
上村 晶 高田短期大学, その他部局等, 助教 (60552594)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保育者 / 子ども理解 / 気づき / プロセス |
研究概要 |
今年度は、下記の3つの方向から研究を遂行し、以下の成果を得た。 1)「子ども理解」に関する研究動向の整理:幼児教育・保育に関する子ども理解の視点と方法論については、国内外の先行研究のレビューを行った結果、①保育者個人の資質に基づく客観的理解、②保育者集団による共有・深化に基づく共有的理解、③保育者と子どもとの関係性に基づく間主観的理解などが主として見出された。また、後述のLearning storyの実際について視察及びインタビュー調査をしたところ、Notice,Reflection,What's Nextの3視点から子どもを理解する上での気づきが喚起されている反面、保育者の独自性に依拠した記述方法により最初の気づきの観点の明確化が難しいなどの課題が挙げられた。 2)保育者の子ども理解のプロセスに関するフィールド調査:A県内のB&C保育園と両園に勤務する保育者6名の調査協力を得て、NZのLearning storyを活用したエピソードに基づく半構造化インタビューと保育観察を1年間を通じて継続的に実施し、TEM(複線径路・等至性モデル)を活用しながら子ども理解を深めていくプロセスに着目して分析を進めた。その結果、①分岐点となる行動・見とりの後に、育てたい方向性に関する意識とありのままを受け止める意識の両義的葛藤が見られたこと、②葛藤後に子どもの今の姿を肯定的に認めて援助をした際に、保育者が願っていた方向性へと変容したことが見出され、葛藤を乗り越えながら互いに理解し合う関係性を構築する重要性が示唆された。 3)子ども理解の段階的指標作成に向けた予備調査:保育者養成段階の学生、現役保育者に質問紙調査を実施し、子どもと理解し合えた及び理解し合うことが難しいと感じた場面について、具体的な記述を得た。また、園長対象調査を実施し、子ども理解を支えると考えられる力量について回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)については、「保育者の子ども理解の方法を考える ―子どもと理解し合う関係性の構築に向けて―」という題目で口頭発表をした(日本乳幼児教育学会:2013.11)。特に、子ども理解の概念については課題を有しているため、今後は質的分析を通じて更なる構造化を図り、検討を重ねていく。 2)については、「保育者の子ども理解のプロセスを探る(1) ―ラーニング・ストーリーを手掛かりに―」というポスター発表で報告をした(日本発達心理学会:2014.03)。また、子どもと理解し合うことが難しいと感じた障壁を乗り越えていくプロセスとその要因の検討については、「保育者の子ども理解を支える要因の検討(2)」というポスター発表を予定している(日本保育学会:2014.05)今後は、1年間を通じた深化プロセスについて、詳細に分析していく。 3)については、当初の予定通り年度末に全質問紙調査が回収できたため、今後分析を手掛けると同時に、本調査の項目選定をしていく。また、園長調査に関しては、「保育者の子ども理解に求められる力量を探る ―保育現場が期待する力量形成とは―」という題目で口頭発表を予定している(中部教育学会:2014.06)。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、次の2点に重点を置いて進めていく。 1)平成25年度の質問紙調査(予備調査)の分析結果を踏まえた上で、子ども理解に関する本調査を保育者養成段階の学生から現役保育者に至るまで幅広く実施し、統計学的分析を通じて段階的指標の作成を目指しながら体系的に考究していく。 2)平成25年度に収集した保育者のインタビューデータ全分析を通して、子ども理解の深化プロセスの様相について、構造化を図りながら要因の検討を行う。また、どのような観点に気づきを得ながら子ども理解を深めていくかというプロセスについて、TEMを用いて明らかにする。 これらの成果について、学会や研究会などで発表すると同時に、論文として投稿していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
保育現場を対象とした質問紙調査(予備調査)の配布に際して、当該年度は一部郵送ではなく直接配布・回収ができたり、当初想定していたよりも配布数が少なかったりしたため、次年度の本調査に向けて調査用紙郵送費及び返送費として繰越計上した。 主に、次年度の本調査は、保育園・幼稚園・認定こども園など、多様な保育現場で幼児教育・保育に携わる保育者を対象とした幅広い調査の実施を計画している。 その他、本研究を進めるにあたって、関連学術図書・データ分析用の設備備品の購入、国内外における新しい知見や情報を収集するための学会・研究会への参加、研究成果の発表や投稿などの使用を計画している。
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