最終年度は全国の大学・短期大学の就職支援担当部署を対象とした「SPI対策」に焦点を絞った質問紙調査の分析について、ウェブサイトにその概要を掲載したうえで、日本教育社会学会第67回大会において研究発表を行った。また、その成果を論文としてとりまとめて『高等教育ジャーナル:高等教育と生涯学習』に投稿し、掲載されることになった。そして、年度末に『採用テストに関するアンケート2015報告書』(2013年度~2015年度日本学術振興会科学研究費助成事業若手研究(B)成果報告書)を発行した。 研究期間全体を通じては、第1に、能力検査や性格検査の開発について心理学の果たした役割を明らかにした。1960年代後半から産業・組織心理学、教育心理学の研究者と民間企業が「産学連携」のもとで、各種の「人事アセスメント」を開発した。そのなかでは、とりわけ心理学者ユング(C. G. Jung)のタイプ論に依拠したマイヤーズ-ブリックス・タイプ指標(Myers-Briggs Type Indicator:MBTI)が重要であった。第2に、企業による行動科学の知識利用の性格を明らかにした。行動科学そのものを信頼するのと同時に、人材の配置や選抜の「客観的」基準について企業内部の成員、大学生、マスメディアからの理解を得るために利用しているという証拠を必要としたのである。第3に、大学がユニバーサル段階へ移行したといわれる2000年代以降、「SPI対策」が就職のための重要な手段であるとみなされるようになるのと同時に、リメディアル教育の動機付けとして役立ったということを明らかにした。高校までの復習ではなく将来のキャリアに向けた展望的な学習に「SPI対策」が用いられているのである。
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