東南アジア10カ国はASEAN共同体の構築を目指している。東南アジア域内を移動する留学生は、ASEAN共同体を構築する上での原動力になると思われる。本研究は、東南アジア域内を移動する留学生のキャリア形成について、ジェンダーの観点から明らかにすることを目的とした。 上記の問題意識の下に、マレーシアを中心にブルネイなど近隣諸国と比較しながら研究を進めてきた。本年度は最終年度にあたるため、実地調査の結果を公表することに注力した。主な研究の成果は以下の通りである。①世界教育学会(WERA)において、「マレーシアにおける留学生移動に対するアジア域内ネットワークのインパクト」というタイトルで英語論文を発表し専門家と議論した。②広く一般の読者を対象とする『東南アジア文化事典』(丸善出版)において、「女性の高学歴化」に関する項目執筆する機会をいただいた。当該項目において、東南アジアを移動する留学生のキャリア形成について、ジェンダーの観点から分析する視点の重要性を指摘した。 さらに、③他の科研と有機的に連動しながら研究を進め、マレーシア国内の教員制度や教員研修について日本比較教育学会で複数回共同発表してきたが、それらの内容を素地に英語論文(共著)を公表した。当該論文において、「女性職」として位置付けられる教員という職業の現状と問題点を指摘した。④マレーシアの「女性の教育」の現状と課題について、イスラームとジェンダーという観点から日本語論文を準備している(ただし、令和2年度出版予定)。 なお、研究代表者は、令和元年度より新規に科研費助成(基盤C)「東南アジア島嶼部における男子・男性のワークライフキャリア形成」を受けている。本若手Bの研究を基盤として、男性学に拠りながら新規研究に発展していきたい。
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