本研究は、生徒数の減少によって地域(具体的には都道府県)の高校教育がいかなる影響を受け、教育機会の提供構造にどのような帰結を生じつつあるのかを明らかにすることを目的としている。都道府県によって大きな違いはあるものの、全国値で見れば、約3割の生徒は私立高校に在籍しており、高校教育機会の少なからぬ部分は私立高校によって担われている。この点は、教育機会の大半が公立学校によって提供されている義務教育段階と高校の大きく異なる点である。したがって義務教育段階とは異なり、少子化による生徒数の減少のインパクトをどう受け止めるのか、公立高校と私立高校の分担をどうしていくのかという視点が求められる。 平成28年度は、これまでの知見を総括し、学会報告や論文の執筆、刊行を行った。5月には台湾の中正大學にて開催されたThe 22nd Taiwan Forum on Sociology of Educationにて報告を行い、日本と同じく少子化が進行しつつある台湾の状況との比較、考察を行った。ここでの議論を発展させて論文(「生徒減少期の高校教育機会」『教育社会学研究』第99集)を執筆した。論文では、教育機会の担い手としての私立学校の特質について理論的整理を行い、私立学校が教育の質の多様性を担保する存在であることを論じた。その上で、生徒減少が進行する中、各都道府県で公私立学校高等学校協議会の機能に変容が生じつつあることを示した。この公私協議会の機能変容は、公私の役割分担のあり方、私立学校が担うべき役割とは何かについての再考を促していること、量的縮小を進行と教育の多様性の担保をどう両立させていくかが問われていることを考察した。また、本研究課題の成果を含む書籍を2017年に出版予定である。
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