平成26年度については、大学に進学した児童養護施設入所経験者を対象としたインタビュー調査を継続する共に、平成25年度に実施したアンケート調査及びインタビュー調査の分析を行った。分析の結果、彼らの大学進学における困難が、学習、金銭、進路選択等の問題として浮かび上がってきた。例えば、「施設の優等生」として育ちながらボーダーフリー大学の授業にのぞむこと、これまで持ったことのない大金を管理すること、アルバイトと勉強を両立させること、進路の一つとして児童養護施設職員という職業を客観的にみつめること等、彼らが大学卒業までにクリアしなければならない課題は数多い。その一方で、彼らに対する支援が十分ではないこと、具体的には、施設職員の離職や信頼関係が構築できていない等の理由からアフターケアが成立しにくい様子も確認できた。 児童養護施設退所者たちが大学を卒業するためには、彼らに対する丁寧かつ長期的なサポートが必要とされる。臨床心理士やソーシャルワーカーの大学への配置や継続的な児童養護施設のアフターケアが欠かせない。児童養護施設ではない。だからといって、就職して働くほどの社会の厳しさを味わわなくてもよい、そんな自立のための準備期間として大学在学期間を位置づけることが求められている。 なお、本助成金による研究実績は、『児童養護施設退所者の大学進学に関する実証的研究』(平成25~26年度科学研究費助成事業成果報告書)としてまとめている。
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