本研究では国語科におけるメディア・リテラシー育成のための学習論の構築をめざして、現代英米の国語科教育論におけるメディア・リテラシーの議論を考察してきた。とくに、「読者反応理論」を説明する言説におけるHenry Jenkinsの諸論に着目し、国語科におけるメディア・リテラシーの学習を構成するうえで重要かつ課題となる「集団としての学習動機」について、それがどのようなものであり、またどのように実践に組み込まれるべきものであるかを指摘した。また、国語科におけるメディア教材の歴史的検討、さらに実際の授業実践として写真を用いた学習プログラムを開発・実施し、写真というメディアの解釈における学習者の「信念」の問題を明らかにした。写真メディアの解釈において、中学校段階の学習者は、とくに強いこだわりを持って解釈の言説を生み出すことがある。これは共同的に学ぶ他の学習者にとって無視できない強度を持って教室内に波及するものである。ただし、そのような解釈は教師の取り上げ方によって他の学習者の認知に影響を与えたり与えなかったりする。したがって、教室内における教師の振る舞い、とくに学習評価に関する諸理論が、国語科におけるメディア・リテラシー実践をより現実的かつ実効可能なものにするためには必要である。この点に関して、現代イギリスにおいて実施されている評価問題の分析から、今後の課題となるべき点を明らかにした。特に記述式の回答を求めるなかで、創作を中心とした課題を作成すること、なかでも日常のメディア生活をシミュレーションできる評価課題を作成することが必要である。
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