前年度までに開発したカリキュラム・教材等を通じて,引き続き研究協力校の小・中・高等学校にて統計に関する授業及び評価を実施した。知的創造力・情報発信力に関するカリキュラム・教材に必要となる要件として下記のことが明らかとなった。1.統計的探究プロセス(PPDACサイクル)に基づく授業設計は,問題把握から分析・結論へと至る活動に意味を持たせ,児童・生徒の主体性を引き出すことに影響し,それ故,知的創造力・情報発信力へのパフォーマンスに関しても影響が大きいこと。2.児童・生徒の興味・関心を誘発する教材設定は当然のことながら大切であるが,さらに収集・分析するデータに関して児童・生徒の自由な発想や興味・関心に応じて,一見無関係と思えるデータも取り入れることで,発想力が刺激され,分析や結論の際の知的創造力が高められるということ。3.従来の指導に多く見られがちな確定的な結果を確認するだけの分析活動ではなく,不確定な事象に対して自分なりに結論を下す教材の方が他者への説明の必要感が増し,情報発信力育成に関しても良い影響が与えられること。 これらの授業を通じての児童・生徒の反応やワークシート等の分析により,本研究において開発したカリキュラム・教材が知的創造力・情報発信力の育成に効果が見込めることが検証できた。 また,統計教育において課題となっている,不確定事象を対象とした解の定まらない問題解決活動に対する評価方法について情報を得るために,統計教育先進国であるニュージーランドに再度渡航し,初等・中等学校での授業実践及び評価方法について現地調査を行った。特設の授業ではなく,通常のカリキュラムに位置付けた問題解決活動とその評価方法としては,扱う題材やデータにある程度の制限をかけることと,統計的探究プロセスに基づくルーブリックを用いた評価を行っていることがわかった。
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