研究課題/領域番号 |
25780527
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
橋崎 頼子 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (30636444)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 市民性教育 / 人権教育 / 発達段階 / カリキュラム開発 / 教師教育 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、多様性尊重と社会統合のためのグローバル時代のシティズンシップ教育カリキュラム開発を行うことである。研究1年目の今年度は、次の3点に取り組んだ。 まず、異なる発達段階を対象とした欧州評議会のカリキュラムを比較・分析し、その連続性の構造を明らかにした。分析の結果、人権条約から導かれた同一概念を繰り返し学ばせる構成であることが分かった。また、小・中・高段階の特徴として、小学校段階では共同体において自己を肯定的に位置づけ、成員としての自覚を高める学習が、中学校段階では主張の対立を人権の観点から分析し、合意形成のための手続きを探究させる学習が、高等学校段階では自己の意思決定と他者との交渉を通した社会参加の学習が重視されていた。この成果は、論文(「人権に基礎をおくシティズンシップ教育カリキュラム―欧州評議会の小・中・高段階の教師用指導書の連続性に着目して―」『奈良教育大学教育実践開発研究センター研究紀要』第23号、2014年、p.111-119)として発表した。 次に、教授学習過程について、社会構成主義に基づく概念および、スキルや価値・態度形成という点から詳しい分析を行った。研究成果は2014年の国際理解教育学会の研究大会で発表予定である。 3点目として、欧州評議会の教師教育プログラムをコーディネートしている、European Wergeland Center(ノルウェー、オスロ―)を訪問し、担当者へのインタビューと意見交換、およびプログラム教材の収集を行った。カリキュラム開発の方策として、①既存のカリキュラムを使用して単独教科としての実施、②クロスカリキュラムとしての実施、③学校全体での実施、④地域と連携しての実施、の4つがあることが分かった。教師教育プログラムでは、教師が自分の学校の現状を振り返り、最も適した方法を選択・再構成・実施する過程を支援していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、多様性尊重と社会統合のためのグローバル時代のシティズンシップ教育カリキュラム開発を行うことである。現在までの到達度を「おおむね順調に進行している」とした。その理由として次の2点がある。 まず、カリキュラムの基本構造のより詳細な分析を行ったことである。今年度の研究では、特に発達段階に応じてスパイラル式に深まっていくシティズンシップ教育の方法を明らかにした。また、社会構成主義を用いた教育過程についても詳細な検討を行った。 次に、カリキュラム開発における焦点がより明確になったことである。研究開始前は、既に出版されているカリキュラムをいかに実施するかが重要だと考えていた。しかし、調査からは、教師が既存のカリキュラムの理念に一定の理解とコミットメントを示すと同時に、自らの学校の状況に応じて既存のカリキュラムの内容を選択・再構成していくことが重要であることが明らかとなった。来年度より、この教師教育の過程により焦点をあてて研究を行っていく。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として下記のことを考えている。 第一に、European Wergeland Centerが実施する教師教育プログラムを調査することである。シティズンシップ教育を実施するにあたって、EDC/HREは教師のカリキュラム開発の能力の向上を非常に重視している。EDC/HREでは、カリキュラム開発を単なる内容の配列とみるのではなく、教室や学校の雰囲気づくりや地域との連携をも含む、学習の過程を作り出すものととらえているようである。状況の異なる各国の教師が、自らの学校の状況とあったカリキュラムを選択・再構成・実施する過程をどのように支援しているのか、その中で共通して維持されている原則は何かについて調査していく。 第二に、European Wergeland Center教師教育プログラムの支援を受けて開発されたカリキュラムおよびその実践を分析し、共通している部分と教師の判断で行われている部分について明らかにしていくことである。 第三に、欧州評議会のカリキュラムの事例をもとに日本のシティズンシップ教育を構成するための要素を抽出することである。すでに分析を終えている欧州評議会の教師用指導書の内容に基づいて日本でのシティズンシップ教育カリキュラムを開発していく上での基本的な要素を抽出していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外から購入予定であった書籍の一部が電子ファイルで入手可能であったため、予定していた予算よりも、少なくて済んだため。 日本語の書籍購入費として使用する予定です。
|