研究課題/領域番号 |
25780528
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
冨安 慎吾 島根大学, 教育学部, 准教授 (40534300)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パターンランゲージ / 国語教育 / 方略 / 省察 / メディア / 教員養成 / 話し合い / 授業デザイン |
研究実績の概要 |
本年度における研究の成果について、三つの視点から述べる。 【パターンランゲージの作成と改訂】本年度は、新たに「アカデミックライティングパターン」を作成するとともに、「国語科授業デザインパターン」の改訂を実施した。 【パターンランゲージの理論的検討】 パターンランゲージを支える理論について再検討を行い、課題解決方略を記述するメディアとしての位置づけから、その役割を包含しつつ、現象(できごと)を記述するメディアとしての位置づけへと理論を再構築した。国語教育研究において、授業や学習の場面で起こる現象(できごと)を共通言語化し、記述することに関する研究は体系だっておらず、その体系の構築に資する検討である。このことに伴い、論文「国語教育のためのパターンランゲージについての考察 : 理念を実現するための形式の検討(1)」において、パターンランゲージの記述形式について再考し、既存の形式の課題とその改善案についての検討を行った。 【パターンランゲージの活用】 「話し合いパターン」「国語科授業デザインパターン」を用いたワークを大学生を対象として行い、その効果について検討した。特に後者は教育実習に伴って教育観を省察するためのメディアとしての活用を試みたものである。ただ漫然とふりかえるのではなく、自らの教育観を共通言語として語り、また、自らの教育観とはマッチしにくい考え方に刺激されながら語る状況を作ることにより、深い省察を起こすことを支援する試みである。また、教員免許状更新講習においては、「話し合い」の学習について、パターンランゲージの発想を用いてその学習を支援する方法を考えるワークショップを実施し、それぞれの実践において起こる現象(できごと)を言語化することについての支援を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の課題であった小学生用のパターンランゲージの開発については、理論の再検討を行い、記述形式を変更したことに伴い、作業の遅れが生じている。再検討した書式に基づき、既存の中学生以上を対象としたパターンランゲージの改訂作業を実施したのち、小学生用のパターンランゲージの作成に着手する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「漢字学習のためのパターンランゲージ」を用いた漢字学習についての学習観を省察するワーク(アクティビティ)の開発を行う。これは、漢字学習について暗黙のうちに形成してきた学習観(漢字とはこういうものだという漢字観、漢字学習はこのように行うべきだという学習方略観)を意識するワークを行うことで、自分と他者との漢字学習観についての違いを考えたり、自分の漢字学習観を見直したりすることを目的とするものである。 また、昨年度試行した「国語科授業デザインパターン」を用いた教育実習における学習支援について、データを用いた分析を行い、その効果についての検証を行う。さらに、「国語科授業デザインパターン」については、教員免許状更新講習においての活用を行い、教員の国語教育観についての省察と対話を促進するメディアとしての使い方を検討する。このことにより、教員養成課程における授業デザインの言語と、実際の教員研修における授業デザインの元との間の共通性と異質性についての検証を行うことができるようになる。 「漢字学習のためのパターンランゲージ」については、小学生用のものを作成して、その配布を行い、効果についての聞きとりを実施する。 これらの活用を実施するとともに、理論的再検討の結果について、論文としてまとめ、その報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において、「漢字学習のためのパターンランゲージ」を小学生用に改稿し、印刷することを予定していたが、形式についての理論的再検討を行う必要が生じたため、その検討の実施を優先したところ、26年度中の作成を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに形式についての再検討は終え、中学生以上の「漢字学習のためのパターンランゲージ」の改訂作業はおおむね終了している。迅速に小学生用のものの作成作業を実施し、その印刷を発注する予定である。
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