研究課題/領域番号 |
25780530
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 真 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70455046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教科教育 / 音楽科教育 / 教師の専門性 / 教員養成 / ドイツ / スタンダード / コンピテンシー |
研究概要 |
平成25年度は、音楽科教師の専門性と教授能力の育成について、教育学領域における教員養成制度研究に基づきながら、音楽科教育の視点で教員養成の構造を明らかにしようとした。具体的には、ボローニャプロセスの影響を受けて学士・修士制度を導入しているベルリン州をとり上げ、音楽科教員養成を行っているベルリン芸術大学におけるギムナジウム教職課程の修得単位数、および学修内容について精査した。また、各州文部大臣会議(KMK)によって2004年に策定された教員養成における教育学、一般教授学、教育心理学、教育社会学に関するスタンダードである「教員養成スタンダード:教育諸科学」、および2008年に策定された教科専門と教科教授法に関するコンピテンシーを示した「教科プロフィール」の2つの文書を精査し、教育諸科学と音楽科教育の双方におけるコンピテンシーの内容と特徴について分析・考察を行った。これらのことから、ドイツにおける音楽科教師の専門性として次のことが明らかとなった。第1に、教育諸科学に関するスタンダードからは、授業形成や子どもへの教育的関与の諸理論と実践的能力、子どもの学習と教師の指導を評価し、適切な学習を構築する能力、および教師としての職能を継続的に開発する能力が専門性として見い出せた。第2に、音楽科に関するスタンダードからは、学校実践の文脈で子どもに音楽を教授し、子どもの音楽学習を形成・支援するための教科専門的/教科教授法的な知識・技能が専門性として見い出せた。そのなかには、学校教育の実践者・研究者として音楽科授業を研究する視座の獲得も専門性に位置づけられていた。 このように本研究は、近年のドイツの教員養成改革において、教師の質的向上を図るために、教育諸科学のスタンダード基盤に、各教科のスタンダードによって教科の専門的な知識・技能を高める構造であることを音楽科の視点で明らかにした点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究の中心としていた、ドイツの各州文部大臣会議(KMK)が策定した教員養成にかかわる文書の精査・分析が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成25年度の研究結果に基づき、音楽科教員養成課程をもつ大学の教員養成規程およびシラバスの分析を行うことによって、履修科目とその内容を明らかにすること(平成26年度)と、大学卒業後の試補勤務期間における音楽科教員養成の構造と内容を明らかにする(平成27年度)予定である。これらを遂行するために、引き続き資料の収集と分析、および必要に応じて現地調査を行う予定である。当初の計画ではボローニャプロセスに基づいてすでに教員養成を学士・修士制度化している州のなかから、芸術大学で養成を行っているベルリン州と、総合大学および音楽大学を連動させて養成を行っているハンブルク州をとり上げる予定であるが、調査の進展に応じて、対象を適宜変更・選択することも想定している。
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