平成27年度は、これまでの研究結果に基づき、ハンブルク州を対象として音楽科教員養成課程を置くハンブルク大学およびハンブルク音楽演劇大学の教員養成カリキュラムを精査した。両大学の音楽科教員養成課程担当の教授2名と面会し、制度的側面について詳細な情報を得るとともに、教員養成における大学の役割と位置づけを明らかにした。ハンブルク州は総合大学であるハンブルク大学と専門大学であるハンブルク音楽演劇大学の2大学にまたがって音楽科教員養成を行う特徴的な州であり、このことによって音楽の高い専門性と後の試補勤務につながる教育学的な専門性の獲得の両立を可能としている。質の高い教員養成の第1段階として、このような体制がとられていることが明らかとなった。それぞれの大学のカリキュラムはボローニャプロセスの影響を受けて、学習のまとまりであるモジュールで構成されている。教育実習もその中に効果的かつ集中的に組み入れられており、バチェラーとマスターの通算6年間で試補となる基礎を培っている。その中では音楽の専門的な学びを学校実践の文脈に変化・適合させることに重点が置かれている。 さらに、教員養成第2段階である大学修了後の試補勤務の実態について、ハンブルク州教員養成・学校開発研究所の教科指導者と面会し、その制度的側面と学習内容および第2次国家試験の基準について明らかにした。その結果、大学における養成と試補勤務における養成の全てを教員養成・学校開発研究所が統括し、各大学、各試補勤務校、教員養成ゼミナールとの連携を図り、教師の資質・能力の最終的な判断の場である第2次国家試験の実施と評価を極めて詳細な基準のもとで実施していることが明らかとなった。 このように、6年間の大学における養成、18か月の試補勤務、および試補勤務中の評価と第2次国家試験の成果全てが積み重なり、指導力と実践力の高い音楽科教師を養成しているのである。
|