研究課題/領域番号 |
25780535
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
林 裕子 佐賀大学, 文化教育学部, 講師 (10649156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ワーキングメモリとレーニング実施 / 英語スピーキング能力の発達 / 外国語教育への示唆 |
研究実績の概要 |
本研究2年目となる平成26年度では、福岡大学にて25年度から実施していた実験の追跡調査(6ヶ月後)と佐賀大学の被験者を対象としたワーキングメモリトレーニングの実験を実施した。追跡調査では、3ヶ月後の追跡調査(H25年3月に実施済)に参加した約70名の被験者に協力を呼びかけ、内45名が参加した。追跡調査では、3ヶ月後の時点でトレーニング効果の継続が示された記憶検査を実施した。
佐賀大学では、時間的制約から、約50名を①ワーキングメモリトレーニング群(25名)と②統制群(25名)の2グループに分け、英語運用能力(4技能を測定)とワーキングメモリ容量に与える効果を検証した。被験者には、日本語能力テスト、ワーキングメモリ検査(2種類)、暗算、英語4技能オンラインテスト、コミュニケーション能力(スピーキング)テストの5つのテストを事前・事後で実施した。ワーキングメモリトレーニング群ではワーキングメモリ容量の改善が見られたのに対し、統制群ではトレーニング前後で有意な伸びは観測されなかった。双方のグループともに、英語能力の伸びは認められなかった。
相関分析を行った結果、コミュニケーション能力テストの結果と(トレーニングプログラム内に組み込まれている)言語性ワーキングメモリエクササイズにおける成績との間に正の相関が示された。つまり、言語性ワーキングメモリ容量の伸びが大きかった学習者は、コミュニケーション能力も高いという傾向が示された。同結果から、外国語指導において、類似したエクササイズを取り入れていくことの可能性について検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
佐賀大学にて実験を実施している際に、教材会社が管理・提供するオンラインスピーキングテストの誤作動、データの損失などの問題が生じ、調査に大幅に遅延が生じた。前もって業者と打ち合わせをしていたにもかかわらず、テスト実施当日にテストが被験者のオンラインアカウントに紐づけされていない、テストが作動しないなどの問題が生じ、再テストの日程を組み直したことが何度もあった。さらに、業者のテクニカルサポートスタッフの作業ミスから、一部データが損失するという事態も発生した。このような予期せぬ事態の発生により、研究の遂行に若干遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
福岡で実施した6ヶ月後追跡調査の結果と、佐賀で実施したワーキングメモリトレーニングの実験のデータ解析を行い、学術誌への投稿、学会発表、ワークショップの開催など、研究成果の発信に努めていく。
平成25年度に実施した実験の成果は現在欧州の学術誌に投稿し、査読結果待ちである。また、平成26年度に実施した実験の結果の一部は、日本及び英国で開催される国際学会の口頭発表をめざし、アブストラクトをすでに提出している。
佐賀大学で実施した研究で言語性ワーキングメモリ容量と(オンラインテストで測定した)スピーキング力との間に相関関係が示されたことを踏まえ、実際の対話におけるスピーキング力の測定を行い、同様な関係が示されるかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、ワーキングメモリトレーニングの成果を検証すべく、記憶力・言語能力テストを実施しております。2年目にあたる平成26年度では、ワーキングメモリトレーニングとスピーキング能力を含めた外国語運用能力の発達の関係を検証致しました。しかし、調査遂行中に、使用していたオンラインテストの不具合で、研究を中断せざるを得ない状況が複数発生しました。そのため、研究の遂行に遅れが生じ、未使用額が発生しました。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、まず、中断していた言語能力テストの実施にあてます。テスト実施にあたり、被験者に拘束時間が発生するため、謝礼品(図書カード)を贈呈する予定です。また、実験補助を担当するアルバイト生に謝礼金(アルバイト費用)を支払います。データ収集・解析終了後、報告書作成、学会発表等、成果の発信に精力的に取り組みますので、それらにかかる経費に未使用額を使用させていただく予定です。
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